年末年始の長い連休。せっかくだから“いいお休みを過ごせたな”と思えるアイディアが知りたいな。素敵なモノやコトに詳しいあの人の、休日の過ごし方をちょっとのぞき見。ヘルシーな中華料理が人気の「中華可菜飯店」オーナー・五十嵐可菜さんの場合は?
五十嵐可菜さんが冬休みにしたいこと「本格そば打ち」
お家で本格的な蕎麦を打つ
私の年始恒例行事。それは実家で母と蕎麦を打つこと。きっかけは父が急に「蕎麦打ちセット」なるものを買ってきたことだった。私の父は、すぐに何でも始めたがるところがある。初心者向けのピアノ教本やら中古のギターやらを買ってみるが、どちらも弾いているところを見たためしがない。蕎麦打ちセットもその一つで、ある日、蕎麦粉と一緒に買ってきたが、一度も使われず戸棚の中に眠っていた。
数年前、みかねた私の母が「せっかく買ったのにもったいない!」と道具一式を引っ張り出してきたのがきっかけで、今では我が家の年始の恒例行事に。
私は料理を作る仕事をしているので、普段は何度も試作をして思い通りの味や形になったものをお店で出しているが、年始の蕎麦打ちだけは失敗しても良いと思って自由に作れるのが嬉しい。一年間仕事で料理を作り続けてきた責任感から解放されて思うがままに手を動かせるのが気持ちよく、良い息抜きになるのだ。私と母が作るレシピは試行錯誤の上なんとなく決まってきたもので、誰かに習ったものではない。だけど何年か作るうちに、素朴で我が家のお出汁にピッタリ合うお蕎麦が出来上がっていった。
まず、ふるった蕎麦粉と中力粉をこね鉢の中でよく混ぜ合わせる。十割そばは難しいので七割くらいで。水を分量のうちの半量加え、粉全体にいきわたるよう手際よくかき混ぜる。
そしてもう半量の水を少しずつ加え、転がすように混ぜて小芋のような状態に。小芋のような状態になったかたまりを少しずつくっつけながらひとつに練りまとめる。練りすぎると良くないので、ほどほどに。
次に少量の打ち粉をしたのし板に生地を置き、生地を回転させながらめん棒で円盤状に伸ばしていく。生地全体の厚さが 5~ 6㎜ 程度の丸い形になるように、丁寧に伸ばすのがポイント。
最後に待っているのが、一番楽しい“そば切り”の工程。「早く出来立ての蕎麦を食べたい」とはやる気持ちを抑えながらそば切り包丁と小間板を使いながら少しずつ切っていく。そば切りが終わったらいよいよ出来立てをいただく。
2022年に初めて作ったお蕎麦は牡蠣の天ぷらそば。ちなみに蕎麦打ちセットを買ってきた張本人の父はここでやっと登場する。父の多趣味ぶりは今も相変わらずで母も私も呆れているけれど、新年の恒例のきっかけとなったことには感謝している。
🗣️
五十嵐 可菜
北海道生まれ。数年間にわたり中華料理店で修行後、ケータリング活動を経て2021年に中華可菜飯店をオープン。「健全でヘルシーな中国料理」を届けることをモットーに、肩の力を抜いて楽しめる中華料理を提供する。