ginzamag.comの人気連載がGINZA本誌3月号「個性あふれるお部屋」特集に登場!俳優の伊藤万理華さんはいつだって好奇心に富んで創作意欲はノンストップ!尊敬するクリエイターの頭の中を覗き込むべくとびきりギークなお部屋へ。
伊藤万理華「誰かのホーム・スイート・ホーム」 特別編 vol.2
ちょっかんさん
マッシモ・オスティが生み出す服の哲学に衝撃を受け、貴重なアーカイブを集め尽くした「GEEK OUT STORE」主宰のちょっかんさん宅を訪問。気づけばそのコレクションはSNSを通じて海外から問い合わせが来るまでに発展し、同じ熱量で服を見つめる新たな仲間と出会い、創作し、語らうコミュニティが生まれ始めたという。“GEEK OUT”という名の通り、まだ見つけられていない ニッチなものに情熱を注ぐちょっかんさんの活動が伊藤さんの探究心に火をつけた!失敗したとしても 自分で作る楽しさを教えてくれた師匠の部屋にお邪魔します。
ちょっかん 2年前くらいかな。共通の知人と一緒に万理華ちゃんが僕のポップアップに遊びに来て驚いた記憶があります。
伊藤 懐かしいです。当時はヴィンテージのメンズ服と触れ合う機会もコレクターさんと話す経験もなかったので、自分が知らない世界に迷い込んでしまった感覚でした。だけどちょっかんさんが影響を受けた書籍を教えてくれてから、一気に興味が湧いたんです。
ちょっかん それは何かというと〈ストーンアイランド〉や〈シーピー カンパニー〉を生んだデザイナー、マッシモ・オスティの集大成ともいえる『IDEAS FROM MASSIMO OSTI』。ブランド創立の1980年初期から約30年の軌跡が詰まった、僕のバイブルなんです。初めて読んだ日に衝撃を受けて、彼が手がけた初期のアーカイヴを探し見つけては買うようになり、いつの間にか後戻りできないくらい集めました。
伊藤 話を聞いていたら私も欲しくなって、探し回って書籍をゲットしたんです。「この一着に袖を通したい」という衝動ではなく、一着に込められた仕かけや遊び、こんな手法で服作りに挑んでいた人がいたんだ、という発見の連続でした。
ちょっかん ポップアップ自体、アイテムを売るだけでなく、ディグってる人にもっとマッシモのヤバさを知ってもらう、という目的も大いにあったので、万理華ちゃんが本を買ったと聞いて「こういうの待ってた!」とうれしくなりましたね。
伊藤 アーカイヴや書籍を眺めながら、仲間が目を輝かせていた光景が魅力的で「いつか私もこんな空間を実現したい」と強く思いました。
ちょっかん それ以来、アトリエによく出入りするようになったよね。
伊藤 はい、雑談をしたり、シルクスクリーンを体験したり。そこで出会った人に私が作ったZINEを渡して、さらに会話が広がるのも楽しくて仕方なかった。コミュニティってこんなふうに出来上がっていくんだ、と開眼しました。
マッシモ・オスティに魅せられ収集家に
ちょっかん 僕はシルクスクリーンの活動もしているんですけど、初めて万理華ちゃんがシルクに挑戦した直後、さらに刷ってみたいからと10デザインほど送られてきて。この人クレイジーでおもろいなと思ったんです(笑)。
伊藤 温度で色が変わる、光る、など特殊なインクを聞いたら試したくなっちゃう。インクを混ぜて作れるなんて、夏休みの実験みたいですよね。だんだん、この発見を活動につなげたいと思うようになりました。
ちょっかん それで彼女から、近々書籍を作るので僕のポップアップでスナップを撮影できないかと相談をもらって。でも「本当にそれがやりたいことなの?」と、ファミレスで掘り下げていきました。
伊藤 「あの日見た憧れの空間を、本当は自分で作り上げてみたい」と、心の声を引き出していただいたんです。そこから火がついて、ちょっかんさんを含め何人かの友人に声をかけ、原宿のポップアップというゴールに向かって走り出しました。私に作ることの喜びを教えてくれた仲間に感謝の気持ちもあり、一緒に何かを刻みたくて。
ちょっかん シルクで10時間ここにいた日、あったよね。もう僕はヘトヘトになっていて、最後の力を振り絞って一緒に服を完成させたような。
伊藤 達成感ありました!イベントは、自分のセンスでディグっている人たちに届くよう、私は名前も出さず、告知を最小限にしました。
ちょっかん 僕のポップアップをストーリーズだけでアナウンスするのは、わずかなヒントをたどってきてくれる、熱を持つ人を信じたいから。やる側もただ服を売るためじゃなく、面白いと思ってやるかどうか。
伊藤 「その言葉、絶対に忘れない……!」と誓ったんです。仕事ばかりしてると、たまにそういう精神を忘れかけちゃうから。
ちょっかん 初心に戻りたくなったら、いつでも遊びに来てください。
Model_Marika Ito Photo_Takao Iwasawa Text&Edit_Satoko Muroga Title logo_Chokkan&Marika Ito