3月のエンタメをレビュー!GINZA編集部がレコメンドする展覧会をご紹介。
G’s ART REVIEW 古今東西の香りにまつわる工芸作品約240点を選りすぐった『香りの器 高砂コレクション展』etc.

小森はるか+瀬尾夏美[二重のまち/交代地のうたを編む]2019
©Komori Haruka + Seo Natsumi
東日本大震災から10年目を迎えるこの3月。2012年に震災を受けアーティストが行ったさまざまな活動をいち早く取り上げた水戸芸術館で、あらためて震災をテーマにした展覧会が開かれる。アートの意味や役割が問い直された震災直後、アーティストらがとった行動の大半は、支援と記録を主眼に置いたものだった。それから10年。作家たちは「作品」を通してあの厄災に応答している。震災が「過去」となりつつある今、芸術による「想像力の喚起」という本質を考える機会になるはず。
【3.11とアーティスト: 10年目の想像】
[セーブル 草花文ポプリポット] 18世紀 高砂コレクション
目に見えない香りにとって、視覚で愛でることのできる器の美しさは欠かせないポイント。香りに関わる約240点を選りすぐったこの展覧会では、古代オリエントの香油壺や近代ヨーロッパの陶磁器やガラスで作られたさまざまな香水瓶から、日本の香道の道具類にみられる贅を極めた漆工芸品、香炉や香合といった器まで、古今東西の香りにまつわる工芸作品が見られる。香りを想起させる貴婦人の肖像画や、アール・デコ時代を象徴するような作品も。多面的に香りが楽しめる。
【香りの器 高砂コレクション展】
[ドローイング]2020 ニューヨーク ©Tam Ochiai
ニューヨークを拠点に活動する落合多武の制作活動は、ドローイング、絵画、彫刻、映像、パフォーマンス、詩や文章の執筆や印刷物など、多様な形態をとる。複数の時間や流動的な思考が含まれる彼の作品は、プロセスとともにある身振りそのものとも言えるだろう。本展は、90年の渡米直後から四半世紀にわたる落合の作家活動からいくつかのシリーズと作品群を組み合わせ、そのなかを自由に遊歩する構成になっている。作家の思考の中を歩きまわるような、体験になりそう。
【「輝板膜タペータム」 落合多武展】
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Recommender: 柴原聡子
建築とアートの編集者。東日本大震災から10年。アートの役割が多様化してきたことを実感。