「伊勢丹新宿店」本館4階のセレクトショップ「プライムガーデン」が、スタイリストの井伊百合子さんをディレクターに迎えたプロジェクト「&ISSUE」を始動。国内ブランドの別注アイテムを受注生産で販売し、その過程をもドキュメント。愛着を生むきっかけづくりが、新たなラグジュアリーにつながる。
スタイリスト井伊百合子さん監修のプロジェクト。作り手と買い手をつなぐ、新しいラグジュアリー

当たり前のことだけれど、服を着る前には、服を選び、買うという過程がある。どういう服を、どういう風に選ぶか。そういったところにコンシャスでいようと、「&ISSUE」は提案する。
「新しいラグジュアリー」をテーマとするショップ「プライムガーデン」とともにこのプロジェクトを立ち上げたのは、スタイリストの井伊百合子さんだ。GINZAの巻頭連載「CANVAS」も担当する井伊さんは、シンプルでありながら意思ある佇まいを表現する名手。彼女の作るファッションページはいつも、奥ゆかしい魅力に溢れている。(そして井伊さん自身も、ものすごくチャーミングで素敵な女性なのだ!)
「&ISSUE」がコラボレートしたのは、井伊さんがスタイリングで使用したり、自ら着用している6つの国内ブランド。デザイナーらと対話を重ね、デザイン以前のプロセスの質をも問いながら、別注アイテムの制作に臨んだ。
プロジェクト全体の軸となるのは、受注生産という点。従来ファッション業界では、セールがある意味前提となって価格や在庫数が設定されていることも多い。また、シーズンごとの移り変わりも激しい。そんな現状の中、もう少しゆったりとした時間軸で洋服に向き合えないか。ものの背景やデザイナーの考えにもっと耳を向けて、自分の価値観に寄り添うかどうかで選ぶ買い物ができないか。井伊さんのそんな思いが、受注生産という方法に反映されている。
もちろん、一目でときめいて衝動買いするのは楽しい。買った次の日から着られるのは嬉しい。だけど、それとは別の価値観もあるはず。ファッションや買い物において、正解なんてない。ラグジュアリーのかたちも、一人一人きっと違う。「ものの情報をじっくり知ること」。「洋服が届くまでゆったり待つこと」。そんな贅沢がフィットする人もいるだろう。
プロジェクト名「&ISSUE」は、「社会の課題(=Issue)を自分につなげる」という意味。在庫の大量廃棄や労働賃金の問題など、「服を着る」ことの背景にはたくさんの課題が潜んでいる。それ以外にも、デザイナーの思い、デザインの過程、製造工程、価格設定の仕組みなど、一着一着が背負うものは深遠で膨大だ。
「&ISSUE」が挑戦するのは、服にまつわるそんな興味や疑問への対話を発信すること。そうして作り手と買い手をつなげることは、ものへの愛着を育むことにもなる。
「一生もの」とか「ベーシック」といった言葉は使い古されてしまっているけれど、それでもあえて言おう。ここにあるのは、一生付き合いたいと思えるような、そしてどんなシーンにも寄り添ってくれるようなアイテムだ。自分のセンス、価値観、社会との付き合い方……ものを買うということはそれらを形にする行為だし、服を着るということは、それらを表現すること以外の何物でもない。そう思えたらぜひ、受注会へ足を運んでみてほしい。
一般受注会は2021年9⽉1⽇(水)から9⽉7⽇(⽕)の間に「伊勢丹新宿店」と「三越伊勢丹オンラインサイト」にて開催予定。なお、受注生産ではありつつも、いくつかのブランドではオーダー数の下限が設けられている。これも、作り手の方たちの負荷を減らすために井伊さんとスタッフらが相談を重ねて決定したこと。ものづくりにはリスクもたくさんある。だからこそ、「&ISSUE」は現在進行形でベストな形を探している。