生まれ変わりたい―ライターの小池未樹さんが試したさまざまな 自分探しの中で、一番目から鱗が落ちたのは「声」だったという。
魅力的な声であなたらしい人生を。ライター小池未樹さんが見つけた『本来の声』とは?

なんてぶざまな声…
落胆から這い上がった自分探し
なんてぶざまな声、そして話し方だろう。録音した自分の声を聞くたび、そんな自己嫌悪を感じていた。早口だし、どうでもいいところで笑ったりどもったりするのも聞き苦しい。こんな声、できれば人様に聞かせたくない。しかしライターという職業上、会話をともなう取材は必須だ。仕事相手からの印象も悪いのでは、という不安の募る日々が続いた。
その不安は、プライベートも侵食していた。人と会って話す時の緊張が強くなったせいで、ついつい顔がこわばり、声も低くなる。挙げ句の果てには会話の相手から、「今日機嫌悪いの?」などとおそるおそる聞かれたりする始末。 知人から、ボイトレ教室を紹介されたのはそんな折のこと。そこで受けた半年のレッスンは、私にとって大きな投資になった。いまでは大学での講演を引き受けたり、自分でイベントを主催して話したり、なんてことまでしている。
私の通ったボイトレ教室では毎回、レッスンの最初と最後に、短いスピーチを録音して聴き比べる。私の場合、初回レッスンの30分だけでも一聴瞭然の変化があった。1回目のスピーチはいかにもぶっきらぼうで、声が小さくて暗い印象。でも2回目の声はぐっと明るく、柔らかくなっていた。
いい声になってびっくり、と感想を述べたら、講師に言われた。「声が良くなったのではなくて、これが小池さんの『本来の声』なんです」 講師によると、大きな声が出せなかったり、必要以上に抑揚を殺してしまったりする最大の要因は、「素のままの自分を出してはいけない」という自己否定。その声を耳から、そして体の内側から自分に聴かせるのは、「こんな自分ですみません」と言い続けているようなものだとか。
メイクもファッションも、「その人本来の魅力」を活かすものがいちばん似合う。声も同じだ。かざりたてた声ではなく、「私は私のままでいいんだ」と素直に思える声を手に入れたことによって、私はぐっと生きやすくなった。人生を変えるツールのひとつとして、ボイトレは大いに「アリ」のはず!
フリーライター・漫画家。著書に『同居人の美少女がレズビアンだった件。』(イースト・プレス)など。どこでも掃除したがる。
Collage: Q-TA