凛としてたおやか──。墨色のボトルから広がる芳しき世界に一瞬で引き込まれる。ブランド初にしてシグネチャーとなる香水とキャンドルである。およそ3年もの歳月をかけて生み出した道のりを黒河内真衣子さんにたずねた。「目は冷たいのに身体は暖かい」。黒河内さんが原風景を表す言葉をアロマに昇華するまでの物語。
💅🏽BEAUTY
〈Mame Kurogouchi〉初の香水ができるまで。
記憶のカケラを凝縮、長野の雪景色を表現
森の息吹を感じたことで輪郭が明確に
「宝物のような時間でした」香りがクリエイションされるまでの軌跡を黒河内さんは慈しんでいた。デザイナーの柳原照弘さんが立ち上げた見えない空間を可視化するブランド〈ライケン〉との協業で〈マメ クロゴウチ〉にとっても香水は初の試み。柳原さんとのなにげない会話がきっかけでプロジェクトが動き始めたそう。
「ここに至るまで長い月日が流れたので、もう、記憶もおぼろげなのですが…。2020年頃にオンラインで別件の打ち合わせをしていて、そこで柳原さんから香りにまつわる新ブランドを構想中であることを教わったんです。さらには『マメちゃんも作ってみる?』とお声がけいただいて。私達の仕事はいつもなにかの話の延長で決まるパターンが多く、今回も例に漏れず、思いがけずスタートしました」
苔や香草、樹液といった大地にまつわる要素でフレグランスを創る〈ライケン〉。調合するのが香りのアーティスト・和泉侃さんであった。黒河内さんは柳原さんとともにアトリエのある淡路島へ向かう。
「山へイブキやミカンの原種であるなるとオレンジ、湧水を見に行きました。その道中ではみんなで深呼吸をして森のにおいを取り込んで、感じとったアロマについても語り合ったり。そんな他愛もないやりとりから表現したい風景が鮮明になりました」
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Photo:Kaho Okazaki, Yuichiro Noda(awajishima), Kitao Wataru(product) Text:Mako Matsuoka