渋谷区内のあちこちに、わざわざ行きたくなるトイレが続々と登場していることに気づいていますか? ケンチクの世界への扉にもなりそうな極小建築を訪ねます。
渋谷区内の公共トイレが生まれ変わる「THE TOKYO TOILET」:東京ケンチク物語 vol.28
THE TOKYO TOILET
ザ・トウキョウ・トイレット
恵比寿東公園トイレ
渋谷や恵比寿、原宿辺りに出かけたとき、どこのトイレを使っているだろう? 特定のデパートや飲食店など、自分だけの〝トイレ地図〟があるって人、実は少なくないはずだ。「きれいなところがいい」「メイク直しのスペースがほしい」「子どもにも安心して使わせたい」……。そうやってあなたはトイレを選ぶ。それはつまり、あなたがトイレという〝空間〟に求めるものがあるということ。名だたる建築家やデザイナーがそんな望みに応えた、使いたくなるトイレが渋谷区内に次々に登場しつつある。「THE TOKYO TOILET」という名前のこのプロジェクトは、渋谷区内の17カ所の公共トイレを、世界的に活躍する16組のクリエイターがデザインするもの。2021年夏までに12カ所がオープンし、2022年の春までにはすべてのトイレが生まれ変わる予定だ。
恵比寿駅そばの恵比寿東公園は、真っ赤なタコの滑り台が目印の、〝タコ公園〟と親しまれる小さな公園。ここのトイレ(上イラスト)を手がけたのは建築家・槇文彦だ。真っ白なボックスから細い柱が立ち上がり、美しくカーブする屋根を持ち上げたこのトイレの形、ちょっとイカに見えないだろうか?
タコの公園にイカのトイレ!!「代官山ヒルサイドテラス」「幕張メッセ」も手がけた御年93歳の建築界の大重鎮による、お茶目なコンセプトだ。くすっと笑ってしまうけれど、建築の力は健在。ボックスと屋根の間には上部を開けてすりガラスがはめ込まれているから、暗くなりがちな個室に光と風が入ってくるし、ボックス横には背もたれの高いベンチが一体化している。さらに木の植えられた中庭もあって、一息つける空間が生まれているのだ。
鍋島松濤公園トイレ
緑が鬱蒼と生い茂る鍋島松濤公園のトイレは、「国立競技場」も手がけた隈研吾による作。分棟になった個室のボックスはそれぞれ吉野杉のルーバーで覆われ、ボックス同士の間はウッドチップを敷き詰めた小径でつながる。木の名手として名高い隈らしい空間だ。ほかのトイレもそれぞれのクリエイターが個性を発揮した、特徴的なものばかり。極小空間で建築家やデザイナーの発想力を知る、小さなショーケースのようなプロジェクトだ。
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ザ・トウキョウ・トイレット
日本財団によるプロジェクト。安藤忠雄、伊東豊雄、坂茂、片山正通、藤本壮介、佐藤可士和など、参加する建築家、デザイナーは有名どころぞろい! バリアフリートイレやキッズトイレを設けるなど、それぞれユニバーサルデザインがなされている。きれいに使い続けるためにメンテナンスに力を入れているのも特徴。NIGO®監修のユニフォームを着たプロたちが、現在は1日に2〜3回程度の清掃を行っている。tokyotoilet.jp