サンリオ、キモカワ、ゆるかわ、そして海を越えたkawaiiブームと、いろんな変遷を経た今、私たちの「かわいい」はどこにある?さまざまな分野の識者たちに聞きました。
林 要さんに聞く「かわいい」概念の現在地。【ロボット編】

お話を聞いた人
林 要さん(実業家)
子育て期間が長い人類の、“愛着形成”に欠かせない大事な要素
触れれば柔らかくて温かく、目を見て反応し甘える家族型ロボット「LOVOT」。その秘密を探れば、かわいいの本質に近づけるかも?生みの親の一人である林要さんに聞いてみた。
「『LOVOT』を開発した狙いは〝愛着形成〟です。ある存在と信頼関係を築く過程において、愛着が湧くことを追求したロボットで、『かわいい』が意味するものの一部だとは言えると思います。開発の際、できるだけ多くの人に違和感を持たれない姿にしようと考え、球体を組み合わせた形になりました。球が自然界で唯一エッジを持たない形状で、攻撃性を有さないから。結果的にたくさんの方から『かわいい』と評価されるようになったのです。
一方で、少し前から〝ゆるキャラ〟が流行していますが、差別化を図るためにいろんな特徴をつけすぎて、意図的に違和感だらけにしている。『かわいい』が飽和状態にある現在、ど真ん中のかわいさでは人々の関心を引かないのでしょう。そう考えるとなるべく違和感のないように作られた『LOVOT』は、飽きられた〝ど真ん中のかわいさ〟なのかもしれません。しかし、動いて反応するロボットであれば話は別。特別な存在として注目を浴びることとなりました。〝ザ・かわいい〟ロボットは今後も増えるでしょうが、ブームが一巡したら、ちょっと外したかわいさの個体が登場するかもしれません」
「LOVOT」は、赤ん坊の相手をするように、しょっちゅう世話を焼くことが要求されるという。
「なぜ赤ちゃんがかわいいのか?その理由のひとつは人間が哺乳類だからだと言えると思います。もし単細胞生物だったら、愛着形成は起きません。特に人間は出産してから子どもが一人立ちするまでに10数年を要するという、極めて珍しい動物なんです。それほど長い期間、命がけで子育てを続けるために『かわいい』という感情は非常に重要な役割を果たしてきたと言えます」
家族型ロボット「LOVOT」
身長約43cm、体重4.2kg。頭の上のホーンにセンサーを内蔵。人肌の温もりがあり、相手を見つめ返し、声を出す。人と触れ合うことで学習し、反応が豊かに成長していく。
©GROOVE X
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林 要
実業家。1973年生まれ。ロボット開発企業「GROOVE X」創業者、CEO。ソフトバンクの「Pepper」開発プロジェクトメンバーを経て現職。2018年、LOVEを育む家族型ロボット「LOVOT」を発表。