そろそろ知っておきたい古典の世界。その嗜み方・楽しみ方のツボはどこにあるの?
はじめまして、ザ・クラシックス 〜クラシック音楽編

セリーヌのクリエイティブ・ディレクターがエディ・スリマンへと交代したニュースは、ファッション界に衝撃を与えた。歴史あるメゾンとデザイナーのマッチングが新たなイメージを生み出す現象は、ファッション界の醍醐味だろう。まったく関係のない話のようだが、クラシック音楽界でも似たようなことが起きている。
世界のオーケストラのなかでも、ベルリン、ウィーン、ロンドン、ボストンは最高峰。いうなれば、ファッションでのビッグメゾンだ。そこに若手から熟練まで個性が光る名指揮者がやってくると、音は変わり、新たな道が拓かれる。このオケと指揮者の組み合わせの妙がポイント。泣く子もだまるスター指揮者4名をおさえよう。
大御所のサイモン・ラトル。優しい音が特徴で人格者。「すべての人にクラシックを」を信条とするところも素敵。昨年、終の棲家ともいうべき名誉あるベルリン・フィルの首席指揮者を去り、ロンドン交響楽団へと移ってファンは大騒ぎ。ステップダウンともとれるこの選択も、世界を転々としてきた彼が出身地イギリスにやっと凱旋したと思うと感動する。そのラトルが、この秋ロンドン交響楽団とともに日本にやってくる。移籍直後の旬なタイミングのコンサート、最高のクラシック・デビューをしたい人におすすめだ。
その名誉あるベルリン・フィルの次期首席指揮者を引き継ぐのが、キリル・ペトレンコ。オペラの名手とされ、どんな座組も変幻自在、作品やオケの良さを引き出す力は他の追随を許さない。オペラの本場ドイツでは、オーソドックスな演出じゃ物足りないファンが多く、異ジャンルの演出家を招いて突飛なアレンジをすることもままある。そんな大胆な改変にもついてきて、目も耳も肥えた聴き手を唸らせる手腕はさすが。
南米出身のグスターボ・ドゥダメルが指揮をする演奏は、情熱的で弾けるようなリズム感がなんとラティーナなノリ。貧民街の子どもに無償でクラシックを教えるプログラム「エル・システマ」から出て、100年に1人の逸材と言われる名指揮者になった軌跡は、メッシやネイマールみたいな南米のサッカー選手に近くて地域柄を感じる。2017年、弱冠35歳でウィーン・フィルのニューイヤーコンサートの指揮を務めたことも話題になった。
最注目はなんと東京にいた!弱冠31歳のアンドレア・バッティストーニは、東京フィルハーモニー交響楽団の常任指揮者。イタリア出身らしく、ラテンなノリと明るい音が特徴。喜怒哀楽がはっきりした、メリハリのある流れは初心者向き。しかも上のイラストのように指揮をしている時の表情と振り方がど派手。ビジュアルと激しい動きは、どこかマイケル・ジャクソンぽい?東フィルの定期演奏会など聴ける機会も多く、気軽にチャレンジできそう。
指揮者、オケ、作曲家の個性が絡み合うクラシック音楽は、良いものを選び、生の音圧を体感すべき。オンシーズンとなる秋のコンサートのチケットを買うなら今。「NHK音楽祭2018」は、ラトル、ドゥダメルはじめラインナップが超豪華なうえ、価格も良心的なので要チェックだ。
まず「生&旬」の音を体感することから始めよう。ライブばりにアガるのも、気持ちよくて寝ちゃうのもよし。オーケストラはノンPA。機械を通さない生音のヴァイブスは、スッと馴染むから肌ツヤにもグッド(著者の個人的な実感)。だから良いコンサートに行って、音の波にただ体を預けてほしい。帰る頃にはすっきり、身も心もデトックスされているはず。