アート界における新たなムーブメントは? 識者である文化研究者・美術評論家の山本浩貴さんに、要チェックな傾向やテーマを教えてもらいました。
🎨CULTURE
23年春に知っておきたいアートの多様な“動き”vol.3「ウェブ上でセッション」

ウェブ上でセッション
出会いや共同作業など、参加者が交流する機会を生む「リレーショナル・アート」。世界的にブームが続いていたこのジャンルは、オンラインでの交流にシフト。
「たとえば映画『カメラを止めるな! リモート大作戦!』は、ビデオ通話の録画と自撮り映像のみで制作されました。デジタルネイティブ世代を中心にその波が広がっていて、画面越しに複数の他者とつながり、ひとつのプロジェクトを完成させることが珍しくなくなった。インターネットさえあれば誰でも参加できるようになり、芸術がより身近なものとして再認識されたと思います」(山本さん)。
象徴的なプロジェクトが、手芸作家のケイト・ジャストによるオンラインワークショップ。また、『シドニー・ビエンナーレ2020』はコロナ禍中、世界で初めて完全バーチャルで国際芸術祭が開催され、アーティストやキュレーターによるオンラインツアーなど観客との新しい交流が試みられた。
ケイト・ジャスト[I am here]
彫刻や編み物などの手法で知られるケイト・ジャストを中心に世界中からメンバーが参加。画面越しにフェミニズムやジェンダーといった問題意識を話しながら刺繡に取り組み、ひとつなぎの大きな作品に。手仕事が美術として認められた点も新しかった。
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山本浩貴
1986年生まれ。文化研究者、美術批評家。ロンドン芸術大学博士号取得、金沢美術工芸大学講師。著作に『現代美術史』(中央公論新社)、『ポスト人新世の芸術』(美術出版社)など。
Text_Hasada Yoko Edit_Nico Araki