薩摩の胤篤(福士蒼汰)が13代将軍・家定(愛希れいか)の正室(御台所)に。『大奥』17話(幕末編2話)をドラマを愛するライター・釣木文恵と、イラストレーターのオカヤイヅミが振り返ります。16話レビューはコチラ。
身代わりになっても構わない相手との美しい巡り合い
薩摩の胤篤(福士蒼汰)が13代将軍・家定(愛希れいか)の正室(御台所)に。『大奥』17話(幕末編2話)をドラマを愛するライター・釣木文恵と、イラストレーターのオカヤイヅミが振り返ります。16話レビューはコチラ。
胤篤(福士蒼汰)が13代将軍・家定(愛希れいか)の正室として輿入れしてきた17話。美しく、振る舞いも言動もスマートな胤篤に、最大限警戒する大奥総取締・瀧山(古川雄大)。しかし胤篤と家定は惹かれ合ってゆく。阿部正弘(瀧内公美)は外交についても的確な意見を持った胤篤と、彼に信頼をおいているようすの家定を見て安心する。
距離を近づけた胤篤と家定が神田祭の折に次期将軍候補の二人に会うシーンが印象的だ。薩摩が推す慶喜(大東駿介)は、家定が外交について聞いても、「特にございませぬ」と明言を避ける。
「将軍はわずかな例を除いて女ばかり。男である私にはもうとてもとても将軍職など務まりませぬ」
この心の通っていなさそうな言い方! 慶喜を演じる大東駿介の腹に一物持っているような表情がじつに絶妙。その様子を見た胤篤の感想、
「慇懃無礼が衣を着て歩いているようでございました」
原作マンガにはなかったこのセリフにはまさに! と膝を打った。なんだかんだいって彼が徳川最後の将軍になることを知っている私たちは、複雑な思いにならざるを得ない。
ともに散歩をすることで体調を取り戻した家定。胤篤はかつて家定に話した薩摩の「郷中教育」のように最善の道を考え、二人の間に子をもうけようと伝える。
「生まれついて上に立つ器量を持つお方などよほどの運が無い限り望めぬでしょう。しかし、人というのは教育です。生まれた子に私たちが教えればいい」
これまでの将軍たちも、悩み、苦しみながら上に立っていた。さまざまな人との出会いで将軍としての自覚や振る舞いが身についていった。このシーンでは今までの将軍たちの姿が思い出されて、ぐっときてしまった。逆に言えば「教育」が間違ってしまうとたいへんなことになるということでもあるのだけれど……。また、その後に続く「その子が跡継ならば、伊勢守さまのめざすところにも多少は近づきやすうなりましょう」というセリフも、あくまでも自分ではなく伊勢守こと阿部正弘の理想を叶えようとする家定の思いを胤篤が深く理解していることが伝わってきた。
Edit: Yukiko Arai