上野の東京都美術館のギャラリーA・B・Cで始まったのは、お弁当は人を繋ぐコミュニケーションツールであるということをテーマとした展覧会。その名も「BENTO おべんとう展 –食べる・集う・つながるデザイン」!GINZA編集部食いしん坊代表として編アシにこが行ってきました〜。
FROM EDITORS 上野・東京都美術館にお弁当箱大集合!

江戸時代から現代に至るまでのお弁当箱や世界各国のものの展示に加え、8人の作家さんの作品が並ぶ。お弁当をコミュニケーション・デザインの視点からとらえ、その魅力を体験しながら、新たな視点を得られる空間はこの夏、ホットスポットになりそうな予感。
お弁当箱の歴史を感じられる部屋。
会場に陳列された建築物やひょうたんの形、実はこれすべてお弁当箱。昔はどうやら派手なのを使っていたみたい。持って行くのも一苦労だろうなと思っていたら、江戸時代のピクニックが大規模なことを屏風や当時のお弁当の再現で知る。時代を辿り現代に行くに従いシンプルで見覚えのあるものも増え、懐かしのアルマイト弁当は使っていた当時を思い出す。

『ひるけ』阿部了さんの展示スペースの様子。 写真家・阿部了さんが全日空の機内誌『翼の王国』にて連載されていた『おべんとうの時間』では、様々な職業の人のお弁当に着目し、写真を撮り続けたという。実際に写し出された人々の美味しそうにほおばる姿を観ているとこちらにまで美味しい香りが漂ってきそうだ……。 「同じようで同じでないものであることが面白い」と阿部さん。過去には友人宅を10年の時を経たビフォア、アフターも撮影したという。並べられた写真のお弁当箱をよーく見ると中身はそれぞれの家庭の色が表れていた。

『intangible bento』マライエ・フォーゲルサングさんのインスタレーション作品。
こちらは食べる行為にまつわるデザインを展開するイーティング・デザインのパイオニア、マライエ・フォーゲルサングさんの作品展示空間。五感で体験するお弁当を提案したインスタレーション作品はリボンのような仕切りを行き来することができ、ちょっとした迷路に迷い込んだように観覧できる。
『intangible bento』マライエ・フォーゲルサングさんのインスタレーション作品の中。
ブースの中では色んな作品を観賞できる。お弁当の思い出をリボン状の紙に書いて「形にあらわれないお弁当の記念碑」を作れる部屋はなんだか七夕の短冊のよう。よくよく読んでみると中身は色んな人のお弁当にまつわるエピソード。自分で書くのもよし、人のをちらりと見るのもよし。わかる、わかると頷いてしまうエピソードも。
『お父ちゃん弁当』小山田徹さんの作品。
こちらは現代美術家の小山田徹さんの作品。息子さんのためのお弁当を毎回長女が絵を描いて考案し、それを元に小山田さんがお弁当を作るというもの。娘さんが描く題材は昨日、遠足でこんなものを見たんだ!聞いたんだ!というところから来ていて、なかなか難しそう。「地層」、「たいふう」、「目つきの悪いフクロウ」や「平安神宮の鳥居のシルエット」、中には「こうごうせい」なんていうものまで。それをお弁当箱の中で精一杯表現する小山田さんの力作の数々。最近何と出会ったのか、何に興味があるのか誰かに話したくてうずうずしてた子ども時代が懐かしく思えた。こうやって自然とコミュニケーションが生まれるのも素敵に思う。
『FRAGMENTS PASSAGE -おすそわけ横丁』北澤潤さんの横丁入り口。
現代美術家の北澤潤さんは弁当の「おすそわけ」の行為に注目した展示を行なっている。美術館内に突如現れた横丁は東南アジアの伝統市場の風景や上野アメ横の歴史を交差させることから構想された。市場自体が既におすそわけによって集まったもので出来ていると言うのだからびっくり。会期中も訪れた人とおすそわけのやりとりをすることができるため、空間が日々変化していく新しい公共空間のラボラトリー。通路を奥に進むと、おすそわけでもらったものから工作ができるワークショップもあり子供から大人まで楽しめる参加型スペースとなっている。
人によっては生活の一部と言っても過言ではないほど身近なお弁当。蓋を開けて好きな食べ物が入っていたら途端に嬉しくなったり、嫌いなものが入っていたら苦い顔をして食べたり…そんな全てをひっくるめて今となってはいい思い出である。今回の展示では意識していなかった作り手と食べる側の会話が知らず知らずの内に始まっていたことに気づかされた。「ちょっと隣の人のお弁当を今度から覗いてみよう」と、そんな風に思わせられる展覧会だった。
途中そこかしこで聞こえた「なんだかお腹が空いてきた」の言葉。みんな空のお弁当箱を見ながら自分の家のご飯を思い浮かべていたのかもしれない。





江戸時代から現代に至るおべんとう箱。工夫が施されたものが並ぶ。
世界のおべんとう箱はこれまた装飾が凝っていたり、素材も様々。
料理家・大塩あゆ美さん、写真家・平野太呂さんの作品。ウェブサイトの連載ではじまったプロジェクトは全国から「あの人にこんなお弁当を届けたい」という投稿をエピソードと共に募集。そこから想像したお弁当のレシピとお弁当箱を読者に届ける企画。
おすそわけブースの様子。美術家・北澤潤さんの作品。
「おすそわけ」の作品では、なんと本当におすそわけしてもらったり、おすそわけしてあげたりできる。これは、家からおすそわけしたいものを持参する際の箱。





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【BENTO おべんとう展–食べる・集う・つながるデザイン】
会場: 東京都美術館 ギャラリーA・B・C
会期: 2018年7月21日(土)−10月8日(月・祝)
開室時間: 9:30-17:30(入室は閉室の30分前まで)
夜間開室: 金曜日は9:30-20:00(入室は閉室の30分前まで)
※ただし7月27日(金)、8月3日(金)、10日(金)、17日(金)、24日(金)、31日(金)はサマーナイトミュージアムにより21:00まで開室。
休室日: 毎週月曜日、9月18日(火)、9月25日(火)
※ただし8月13日(月)、9月17日(月・祝)、24日(月・休)、10月1日(月)、8日(月・祝)は開室
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編集アシスタントにこ
忘れもしない。わくわくした気持ちでおべんとう箱を開けた瞬間、海苔と塩昆布だけでつくられた私の似顔絵。恐るべし母の手抜き弁当(小声)。※因みに母の名誉の為に言うとこれはごくまれなケースである。@2_c_o_