よなよなネットの世界をパトロールするGINZA編集部のエンタメ好きライターが、寝る間を惜しんででも見たい作品をピックアップ!
🎨CULTURE
アカデミー賞最多ノミネートのヒューマンドラマ、Netflix『ROMA/ローマ』
普段は気軽な30分ドラマをソファでだらりと見ている私が、背筋をピンとしつつTVに向かった。見たのは、『ゼロ・グラビティ』で初のラテンアメリカ出身者としてアカデミー賞監督賞を受賞したアルフォンソ・キュアロン監督が、生まれ故郷のメキシコに戻り撮影した『ROMA/ローマ』。
舞台は政治混乱に揺れる1970年のメキシコシティ。中流階級家庭に家政婦として奉公するクレオとその一家が 物語の中心だ。オープニングでは石造りの床を固定俯瞰で撮った絵に、鳥の鳴き声、はるか上空を行く飛行機の音、その床を流す水とブラシの音、と既にこの作品の美しさを予感!クライマックスの海のシーンももちろん美しいけど、好きだったのはクレオの雇い主であるソフィアが夫のフォードのギャラクシー(毎回駐車に手こずりまくる)を小さなルノーの車に買い替えて帰宅するところ。所有する物で人間性と状況を匂わせる皮肉の効いた演出にくすり。さらに環境音を生かした録音が、淡々としたモノクロの映像をぐっと味わい深いものにしている。家族と階級、そして女性を情感豊かに描き上げた作品だった。
1月にゴールデン・グローブ賞の外国語映画賞を受賞した本作は、ネットフリックスで独占配信中。日本の映画館では上映されない方針が表明されたそうだけど、もったいないほどの名作。暴動や火事、ダンスなど映画らしいダイナミックな絵までもちりばめられた、映画館の大スクリーンで観たい映画!
『ROMA/ローマ』
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川島あぐり
エディター。多用されるクレオが街を走るシーンは『フランシス・ハ』を連想させます。
Illustration: Naoki Shoji Text: Aguri Kawashima