現代のものにはない色や柄、フォルムに無性に惹かれるのはなぜだろう。時間という魔法にかけられて、それらはとってもチャーミングな輝きを放つ。ヴィンテージを愛する人に“いちばんのお気に入り”を見せてもらいました。
クローゼットの宝もの 飯田珠緒さんのパールやダイヤモンドのジュエリー
学生時代に購入したヴィンテージのカレッジスウェットを今でも着ているし、〈ミリアムハスケル〉のコスチュームジュエリーも持っているというスタイリストの飯田珠緒さん。幅広いヴィンテージのコレクションの中から今回紹介してもらったのは、特別な存在のジュエリーだ。
「母から譲ってもらったものなんです。パールのネックレスは、私が20代の頃にお願いして以来、よく身につけています。普段の私のスタイルはカジュアルが軸なので、Tシャツ、スウェット、つなぎ、デニムなどに合わせて、本当に日常使いです」
「昔はおしゃれだったみたい」という飯田さんのお母様は独身時代は銀行員で、50〜60年代と思われる若い頃の写真は、素敵なスーツやワンピース、コート姿ばかり。
「聞いてみたら、服はほぼ洋裁店で仕立ててもらっていたそうです。銀行では『流行は茉莉ちゃん(母親の名前)から』と言われていたとか。それらの服も一部、私のところにあるんですよ」
ダイヤモンドのブレスレットやリングは、飯田さんのお母様が仲の良かった叔母様の形見分けでいただいた中から、数年前に、飯田さんがさらに受け継いだものだそう。
「凝ったデザインもありましたが、私好みのシンプルでクラシックなタイプを選んで譲ってもらいました。ブレスレットは特にお気に入りです。ちょっとアールデコっぽい雰囲気で、華奢すぎずゴージャスすぎずの塩梅がちょうどよくて、カジュアルスタイルから、レセプションなどのパーティの装いにも華を添えてくれています」
ヴィンテージショップで出合ったものも、もちろん誰かが愛用していたのだけれど、 「こうして譲り受けたものは、自分の知る家族の歴史や思いも一緒に継ぐような感覚で、やはり購入したものとは比べられない、かけがえのない宝ものです。どんなジュエリーよりも大切にしていて、お守りみたいに思っています」。
今回の取材をきっかけにあらためて確認したら、真珠の指輪はご両親の婚約指輪だったと判明!
「『えええ、そんなの私が持っていていいの?』と聞いたら『いいよ』というので、まだここにありますが、返したほうがいいか思案中です」
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飯田珠緒
いいだ・たまお>> 本誌でもおなじみのスタイリスト。音楽好きでも知られていて、コロナ禍が落ち着いてきたところで、ライヴに行く予定が2023年春まで詰まっている。