現代のものにはない色や柄、フォルムに無性に惹かれるのはなぜだろう。時間という魔法にかけられて、それらはとってもチャーミングな輝きを放つ。ヴィンテージを愛する人に“いちばんのお気に入り”を見せてもらいました。
クローゼットの宝もの 高橋ヨーコさんのアメリカン オプティカルのメガネ
「メガネとカメラは、欲しかったら何でも買ってOKと、ずいぶん昔から自分に許しているんです。『それはいいでしょう、あなたの一部なんだから』って」
高橋ヨーコさんが求めるメガネは、形がオーソドックスで、全体がセルならセル、メタルならメタルと同じ素材でできているもの。これと決めた店があるわけではなく、日本でも海外でもたまたま見つけて自分の顔とフィットするなら迷わず購入!これまでに集めた30点以上からピックアップしてくれたのは、「自分の中では貴重」なヴィンテージ。1833年マサチューセッツ州で創業した〈アメリカン オプティカル〉は、ジョン・F・ケネディの愛用品としても知られる、高橋さん好みの飽きのこないマスターピースを作り続ける老舗。その60年代のフレームを見つけて、度付きレンズを入れて使っている。現行品もあるけれど、 「説明しがたいのですが、並んでいたら何も知らされていなくても、必ず古い方を選びます。質感、空気感、やや形が未完成というかピッシリしすぎていない雰囲気に、ちょっとしたユニークさ、愛しさがある」。
普通にありそうなデザインだけに、誰にも見分けがつかないかもしれないが、本人にとっては、かけ心地がまったく違う。いいなと思うものがヴィンテージとは、ある意味、究極のセンサー!?そもそも視力が落ちて矯正が必要になったのは高校時代だが、“メガネ愛”の芽生えは早かった。
「小学校低学年から憧れていて、どうしたら目が悪くなるかと頭をひねっていたほど。7歳頃に銀縁のを拾って喜んでかけていたのを覚えています。原点は、おじいちゃんのメガネ姿がかっこよかったことなので、今もクラシックな方が好きなんです」
実は、もっと古いお気に入りも持っていたのだけれど、サングラスとかけ替えていて見失ったり、出張先に予備として持参したのを忘れたり。立て続けに紛失してしまい、そのショックがとても大きかった。
「もう手に入らないと思うと切なくて。これも、一時は毎日のように使っていたんですが、失くすのが怖くなってしまい、このところは温存させている感じ。つい慎重になってしまいますね」
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高橋ヨーコ
たかはし・よーこ>> フォトグラファー。1970年京都出身。2012年より『Visual Journal ONTARIO』を刊行。トレードマークのメガネは、インスタ(@yoko1970)のアイコンにも。