2023年10月7日(土)〜9 日(月・祝)まで岡山県倉敷市美観地区で行われるデニムにまつわるアート作品の展覧会「SETO INLAND LINK (セト インランド リンク)」。「“デニム”が紡ぐ多様な個性」をコンセプトに、アーティストをはじめデニムの街・児島(倉敷市)の職人や地元の小学生らが制作に関わった作品が展示される。19歳でイタリアのファッションコンペティション「ITS(International Talent Support)」の最年少ファイナリストになった八木華も登場。彼女が織りなすデニムの新しい未来とは?
岡山県倉敷市で開催のデニムが紡ぐアート展「SETO INLAND LINK」。デザイナーの八木華に注目!

![2019年のファッションコンペ「ITS(International Talent Support)]で発表した[Repair コレクション]。](/_next/image?url=https%3A%2F%2Fapi.ginzamag.com%2Fwp-content%2Fuploads%2F2023%2F10%2FHana-Yagi-archive2.jpg&w=3840&q=75)
[Repair コレクション]を眺めているうちに、夢と現のはざまにいるような不思議な感覚を味わう。デザイナーの八木華はビンテージのレースやオーガンジーをはぎ合わせたドレスで、モードの世界から注目を集めた。田んぼや畑でまとう作業着や寝具などの切れ端を縫い合わせる青森などに見られた民俗衣「襤褸(ボロ)」などからインスピレーションを得ている。
「暮らしの中で役目を終えた布切れを集めて修復する。その在り方に感銘を受けました。私も新しい布からの創造ではなく、長年愛されてきたテキスタイルで再構築をしてみたいと思うように。そうして19歳の時にチャレンジした『ITS』で発表しました。これがきっかけとなり、地域の色もにじむ服づくりにも取り組むようになったのです。」
歴史と文化に向き合いながら幻想的なデザインを生む。そのスタンスに共鳴した「SETO INLAND LINK」からデニムを題材にしたドレスの依頼が舞い込んだ。
「新しい作品を必要としてもらえることはデザイナーとして、とても嬉しく、幸せなできごとでした。しかも熟練の技術を持ったデニム加工の職人さんと手が組める。初めての体験に心が躍ったものです。」

実験的な舞台で彼女は「襤褸の晴れ着」をテーマに選ぶ。
「現在までのところの私のマスターピースである『襤褸』と対極のジャンルを組み合わせています。晴れ着も長年、気になっているテーマでもあるので。今回は廃材のデニムを赤に加工し、よそゆきに再創造しています。児島の工場から提供された廃材とともに、職人さんによってダメージ加工されたホワイトデニムを受け取りました。その風合いこそがインスピレーション源になっています。受け取った日の感激は忘れられません。熟練の技術が作品に深みを与えてくれました。“自分で作る”ことが好きですけれど、このプロジェクトを経て、世界の狭さから解放された気がしています。現地に足を運んでコミュニケーションを重ねながらものづくりをする喜びを知りました」
新鋭デザイナーと児島のデニム加工職人らによるコラボドレスは1体。倉敷で新しい歴史の目撃者になろう。
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八木 華
1999年東京都生まれ。都立総合芸術高校卒業後、「coconogacco(ここのがっこう)」で学ぶ。2017年に『装苑賞』ファイナリスト選出。2018年には第19回グラフィック「1_WALL」審査員奨励賞(保坂健二朗選)を受賞する。2019年ファッションコンペティション「ITS(International Talent Support)」ファッション部門のファイナリストに最年少19歳で選出。主な展覧会「fragments」(2021年/art space traffic [東京・自由が丘])、「seam」(2021年/I SEE ALL[大阪・船場])など。
Text&Edit_Mako Matsuoka