野菜の旨み、力強さに魅せられる
新富町の隠れ家のようなビストロ
「農作物は、作る人の感性や人柄が出るから面白いですね。長崎県雲仙市、田中農園の田中くんが作る在来種は、素朴で滋味深い。千葉県柏市にある吉野ハーブファームさんは力強く華やかで、繊細さもある」と、これまで日本各地のシェフや農園と交流を深めてきた鈴木研シェフ。信頼する農家から毎週届く“おまかせ野菜”の箱を開けるときは、毎回ワクワクしっぱなしだと言う。故にメニューは日替わり。例えばある日のスープドポワソンは、丸ズッキーニ、ナス、甘長ししとうやにんじんの花など焦げを効かせた夏野菜をメインに、魚介のソースがそれらを引き立てる。また翌日には、サクッと揚げた会津小菊かぼちゃを添えた、たっぷりのスープが主役の一皿に。その日の天候や野菜の表情と対話して、綿密に仕込まれたフォンとともに即興で料理を生み出していく。コース一択ながら、毎日でも通いたくなるメニュー構成は積まれた研鑽の深さゆえ。素材のポテンシャルを存分に引き出す巧みな野菜づかいに魅了されること間違いなし!店名の“メヒシバ”は田畑の畦道などに群生する雑草のことで、敬愛する焼き物作家・渡辺隆之のアートピースにも由来しているそう。器選びや内装に至るまで、シェフの熱い想いがひっそりと、でもたくさん詰まっている。