焼き魚にも刺身にも、やっぱり醤油。日本人ですもの、自然ななりゆき。
でも、味つけや食べ方を変えると魚を食べる楽しみがもっと広がる。そこで、がらりと違う趣向を。
行き先はインド方面です。
インド周辺の国にはティッカと呼ぶ料理がある。ティッカの意味は〝小さなかけら〟。火が通りやすく、扱いやすく、食べやすい……とても身近な料理法だから、もちろんつくりやすい。「チキンティッカなら聞いたことがある」という声も聞こえてきそう。鶏肉バージョンもとてもポピュラーです。
ティッカの味つけには共通項がある。それは、ヨーグルトとスパイスを使うこと。つまり、スパイシーな味つけをしたヨーグルトに鶏肉や魚を漬け込んで焼く。「では、タンドリーチキンとは何が違うの?」と思いますよね。タンドリーチキンの場合は、スパイスとヨーグルトに漬けた骨つきの鶏肉を土窯(タンドール)で焼いたもの。いっぽう、ティッカは小さく切ってあるので、フライパンで焼いたり串に刺して焙ったり。焼くだけだから家庭でも手軽につくれて、とても便利。覚えておいてソンはない料理だと思う。
魚のティッカなら、まろやかな舌触りのメカジキを勧めたい。
【材料】
メカジキ約300g
A(ヨーグルト1/3カップ レモン汁小さじ1 おろし生姜・おろしにんにく各小さじ1/2 カレー粉大さじ1 粉唐辛子少々 塩小さじ1/2)
イタリアンパセリなど好みのハーブ適宜
【つくり方】
①メカジキを4〜5cm角に切り、塩(分量外)を軽くまぶして30分ほど置いてから水気を拭き取る。
②ボウルにAの材料を入れ、よく混ぜてから❶のメカジキを入れ、1時間ほどマリネする。
③樹脂加工のフライパンを熱し、メカジキを焼く(マリネ液は少し取る)。
④皿に盛り、刻んだハーブを散らす。好みでレモン汁をかける。
*水切りしたヨーグルトを使うと、より濃厚な風味になる
*グリルで焼いてもおいしい
じつは、インドには海老のティッカもあるんです。その場合は有頭の海老をマリネしてから殻ごと焼き、そのまま皿に盛る。熱い殻をむきながら、指先をこっそり舐めてにんまりするのも楽しくて。羊肉が好みなら、ラム、マトン、どちらでも。週末やお客さまを招く日など、魚介や肉のティッカを盛り合わせてみるのもいいですね。
だんだん気温が上がってきて、いよいよ暑い夏の始まり。暑い国の料理には、暑さをしのぐための料理の工夫がたくさんある。ティッカもそのひとつ。酸味のあるヨーグルト、芳しいスパイスを組み合わせて食欲増進を図りたい。私は、カレーのサイドディッシュにしたり、グリーンサラダをたっぷり添えてワンプレートにすることも。
ヨーグルトのまろやかな酸味を活用する賢い知恵が、ティッカのなかにはある。