クローゼットにひそむ、どうしても手放せないものはありますか?かけがえのない“記憶”が刻まれた物語を紹介します。
俳優・磯村勇斗の大切なもの「ドクターマーチンのブーツ」
17歳の時にがんばって買った
タフで頼りになるパートナー
ワイドめのパンツに合わせておしゃれを楽しむ日もあれば、山でサバイバルゲームに興じる時の相棒にすることもある。その分きちんと手入れして、やっといい風合いにくたってきた。
俳優の磯村勇斗さんが「はけばはくほど可愛く見えてくる」と話すのは、ドクターマーチンの8ホールブーツ。高校2年生の時、修学旅行先のハワイで買ったものだ。
「当時、周囲ではブーツをはくことがステイタスだったのですが、僕には高くて手が届かなかった。それがハワイなら安いと聞いたんです。アラモアナショッピングセンターで1万円くらい。うれしくてホテルの部屋で試したものの、汚したくなくて、帰国してからはき始めました」
とにかく頑丈で傷つかない。ブーツは他にも持っているけれど、ついこれを選んでしまう。
「マーチンがすごいのは、どんな服にも合っちゃうことなんですよね。白米みたいに、どんなおかずにも合うというか」と言った直後、「白米って!」と大笑い。
「あ、でも、僕自身がめざしているのも、マーチンや白米のような俳優と言えるかも。監督や作品によってそのつど色を変えたいと思うし、一回一回、世界観を深堀りしてから現場に臨みたい。と同時に、ひとつの役に何千通りも演じ方がある中で、自分の選択が正解かどうかを確める、客観的な目も持っていたいと思います」
では、高校生の頃と今とを比べると、マーチンとの付き合い方は変わりましたか?
「好きな服は変わっても足元は変わらないですね。初めて高い靴を買った時のうれしさは忘れたくないし、これをはいてカッコつけてた青春時代があるから今がある。どこかで売ってるマーチンとは思い入れが違う。この先もいっしょに歩んでいきたいです」
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磯村勇斗
1992年静岡県生まれ。映画待機作に劇場版「きのう何食べた?」(2021年11月3日公開)、「彼女が好きなものは」(2021年12月3日公開)、「前科者」(2022年1月公開)がある。また2021年12月からは舞台「泥人魚」への出演も控えている。
Photo: Yasuhide Kuge Text&Edit: Masae Wako, GINZA