1991年にクリストフ・ルメールが立ち上げたブランドは、休止期間を経て2010年からサラ=リン・トランとの協働で再スタート。〈ルメール〉のデザイナーのふたりが来日したと聞き、さっそく会いに行きました。
〈LEMAIRE〉パリと東京、ふたりのクリエイション

──Covid-19の最中と今とでは、クリエイションに変化はありましたか?
クリストフ(以下C) 完全にステイホームを強いられる時期が続いた時、毎日家の中にいたおかげで、日常の出来事や身のまわりの物により一層意識を向けるようになりました。そのことがデザインのフィロソフィーをより強固にしたと思います。
サラ=リン(以下S) 私もお茶を入れる、お皿を洗うなど、ちょっとしたしぐさを大事にするようになりました。21年春夏コレクションに食べ物の色や普段使っている陶器の色彩が入っているのは、室内の情景やふだん目にすることを意識したからだと思います。
直近のコレクションではスリット入りの裾が揺れるスカートや、前を開けて着るコートなど、より身体のムーブメントを感じられる服が増えました。それは、Covid-19がようやく収束しそうな時代の解放感や自由さを反映しているかもしれません。
──今年3月にはパリに新しい旗艦店がオープンしたそうですね。どんな内装ですか?
C 以前の店と同じくマレ地区の、エルゼヴィル通りに2フロア340mの店舗を構えました。前よりずっと広く、人々を迎え入れる温かさに満ちたストアです。インテリアは際立った個性を放つよりもあえて〝ノーデザイン〟な雰囲気にしたいと思ってました。
そこで床にはモロッコの「ベジュマット」と呼ばれる手造りのテラコッタタイルを敷きました。世界中どこにでもある素材だし、伝統的かつタイムレス、ぬくもりがありつつ主張しすぎない。サステイナブルという意味で現代にフィットしています。壁には「アバカ」というフィリピン産の自然繊維の織物をかけて、まるで中世の城の壁がタペストリーに覆われているように。
またエンツォ・マーリのミニマルな木の家具を什器として取り入れました。釘と木材さえあれば誰でも組み立てられるキット式の素朴なデザインは、テクノロジーばかりに猛進していく社会に対する少しばかりのアンチテーゼも含んでいます。
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住所: 1 rue Elzévir, 75003 Paris
Tel: +33-1-76-21-46-58
営業時間: 10:30〜19:30、日11:00〜19:00
定休日: 無休
S 地下のスペースでは、23年春夏以来2シーズン続けてコラボレーションしているインドネシアのアーティスト、ノヴィアディ・アンカサプラの作品を展示しています。なぜ私たちが彼のドローイングをデザインに取り入れたのか、その理由を皆さんに伝えたいし、彼自身のアートワークをより深く知ってほしいから。今後もコレクションに関連した作家の作品をこの場所で定期的に紹介していきたいと考えています。
──2020年秋から東京・南青山の〈SKWAT〉に期間限定ストアを設けましたが、現在も続いていますね。今後の展開は?
C 日本で〈ルメール〉がどう受け入れられているかを知ることができましたし、お客様にも直接会えてうれしかったです。もちろん、いつかは東京で正式な店舗が持てたらと願っています。
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SKWAT/LEMAIR
住所: 東京都港区南青山5-3-2
Tel: 03-6384-0237
営業時間: 12:00〜20:00
定休日: 月
Photo: Miyu Yasuda Text: Mari Matsubara