綾部祐二さんの一時帰国を機に東京の思い出を巡る旅へ。歩きながら、未来に向かっていたあの頃の話に花が咲く。そんなふたりにはどんな道が拓けているのだろう。
ピースの冒険はまだ続く
6年ぶりのランデブー・その2
ネイティヴアメリカン流の馬との
対話を又吉さんに体験させたい

綾部 𠮷野家がタッチパネルになっていたみたいに、この6年で飲食店のオーダー方法やキャッシュレス決済とか日本もIT化がめっちゃ進んだね。PayPayとか超便利だもん。デジタル技術だけじゃなく、健康保険とかもしっかりしてるし。外に出て恵まれてると気づいたよ。だから無関心でいられるのかもしれないけど。
又吉 僕からすると、PayPayを使えることに憧れる…。
綾部 やっぱり、使ってないと思ったわ。Suicaは持ってる?
又吉 一応。アプリもあるけどカードタイプ。だから、スマホでピッと改札を通ってみたい。
綾部 俺なんか使いまくって電車移動してるけど、日本の車内はすごく静か。NYは楽器演奏してる人もいるし、ロスは道端で知らない人に「その水筒はどこの?」とかも聞かれる。ちょっと逸れたけど、俺がいない間、そういうことは大丈夫だったか!?
又吉 地方ロケで泊まるホテル内では部屋番号を忘れないように写真を撮って、迷わんようになったかな。ちなみに4年前に訪ねたNYではUberで移動したで。
綾部 それはすごい!今度はモンタナ州とかネイティヴアメリカンの伝統が残る地域を案内したいわ。馬に乗って草原を1時間くらい走るツアーもあるから。
又吉 めっちゃ興味深い。上野動物園でのロケで僕が「うぉーい」って声をかけたら象が集まってきたの覚えてる?
綾部 あったなー!
又吉 野生動物にも通じるか試したい。
綾部 又吉ならできるかもね。俺は片言の英語と日本語しかしゃべれなくても50カ国の人と友達になったよ。
又吉 さすがの順応力ですね〜。
綾部 渡米したての頃、ネイティヴアメリカンの知り合いから「スパに行こう!」と誘われて参加したら、まさかの精神と魂を浄化する伝統儀式「スウェット・ロッジ」で。極寒の山奥で熱波に耐え抜いた後に、くだものとかオーガニックな食材でチャージする流れなんだけど、そこで俺が持参したのはメロンパン。どうしようと思いつつも差し出したら、それが、大ウケして。以来、みんなと仲良しだよ。
又吉 本当に綾部さんはコミュニケーション能力の鬼ですね。
綾部 違った環境や文化にすっと入り込むのは得意なんで。日本でもバイトを始めたらすぐにリーダーや主任になってた。それは海外でも同じだった。もちろん、アメリカのフレンドリーな気質も大きいよ。さっきの水筒のエピソードの続きになるけど、どこのものかを聞いてきた後に「ねぇ、これ、見て。めっちゃよくない!?」って、近くを歩いていただけの人にも声をかけて巻き込むし。
又吉 ミュージカルみたいやな。
ノリが良く明るい綾部さんのオープンマインドなキャラが人を引き寄せている。だが、すべてが心温まる出会いばかりではないそう。すれ違いざまに人種差別を受けたことも数知れず。そんな時は相手の発言に屈せず、毅然と振る舞うようにしている。
綾部 この6年で差別は日常に潜んでいるというのがよくわかったよ。実際に俺は公園や駅で白人至上主義の発言や、アジア人に対する批判を浴びせられたから。あと、ニュース番組で週末のマンハッタンで25年ぶりに誰も撃たれなかったと報道していて。なんちゅう話を笑顔で伝えているんだと。
日本と違いアメリカが銃社会であるという現実を象徴している。
Photo_Taro Mizutani, Wataru Kitao Styling_Naoki Ikeda Hair&Make-up_Kenichi Yaguchi Text_Mako Matsuoka