──今回、『貴公子』では、これまでの柔らかな役とは異なる狂気の顔や、息を呑むアクションを披露されていて、とても面白く拝見しました。
楽しんでご覧いただけたようで嬉しいです。俳優として今までと違う姿がスクリーンに映し出されたと言っていただけたのは、本当に意味がありますし、喜ばしいことです。これからも、常に新たに発見をしていただけるような俳優になっていきたいと思っています。
──パク・フンジョン監督が、キム・ソンホさんの出演作を観ながら、ほかの人はまだ知らない冷ややかな顔がある、と発見したことがキャスティングにつながったそうですが、それを聞いたときはどんな気持ちでした?
監督とは普段から親しいのですが、個人的にそういう話はしたことがなかったんですね。だから、別の人からその話を聞いたときは、正直、ありがたかったです。監督にいつもとは違う一面に気づいていただけたというのは、俳優にとって意味のあることなので、とても気になって監督に電話をして、「僕にそんな面があると感じていたんですか?」と聞いたくらい。そうしたら、「だから、今回キャスティングしたんだよ」と話してくれて嬉しかったですし、面白いハプニングだったと思います(笑)。やった!という気持ちでした。
──貴公子は、信じられる人間なのかもわからない、行動原理が掴めないので、観ているこちらの想像力が掻き立てられるキャラクターですね。
まず、台本を読んだとき、疑問がたくさん浮かんだんです。その問いを全部抱えた状態で監督に会いに行きました。そして、なぜその行動をするのか、そしてなぜその理由を明かすことなく展開していくのか、監督とさまざまなことを話し合いながら作り上げていきました。この人物が感じている感情の本質は何か、それを探っていく作業でもありました。
──リファレンスにした作品などもあったのでしょうか?
監督と話しながら、スタンリー・キューブリック監督の『時計じかけのオレンジ』(71)を参考にした部分もありました。映画で描かれている行為自体を楽しんでいる、そんな設定の役だと思うのですが、貴公子にもそういった面があると考えました。本当に謎の多い人物ではありますが、理由を探求していく過程で、少しずつ具体的にキャラクターが固まっていきました。