『破墓/パミョ』(10月18日公開)とは、移葬したり、改葬するために墓を掘り返すこと。後継ぎが代々謎の病気にかかるという怪奇現象に悩まされる家族から、桁違いの報酬で依頼を受けた朝鮮半島のシャーマン、巫堂(ムーダン)・ファリムと弟子のボンギル。彼らのもとに、風水師、葬儀師も加わり、お祓いと改葬が始まるが、出てきてはいけない何かが出てきてしまう……というサスペンス・スリラーを監督チャン・ジェヒョンが生み出した。ステレオタイプとして描かれがちな巫堂や、いわゆる中年と呼ばれる世代のイメージを現代のムードにアップデートする本作は、韓国で約1,200万人を動員し、第60回百想芸術大賞で監督賞、主演女優賞、新人男優賞、芸術賞を受賞した。巫堂ファリムを演じた、キム・ゴウンにインタビュー!
現代版、クールなシャーマンを熱演
『破墓/パミョ』のキム・ゴウンにインタビュー
──これまで、映画『プリースト 悪魔を葬る者』(15)、『サバハ』(19)を手がけてきたチャン・ジェヒョン監督の脚本、演出最新作となる本作に出演し、チャン・ジェヒョン監督のストーリーテリングの独自性、魅力をキム・ゴウンさんはどのように感じましたか?
監督はただ普通のジャンル映画として描こうとするのではなく、1本の映画作品としてアプローチしているなと強く感じました。ひとつのテーマを取り扱うために何年間もかけてその分野について一生懸命勉強し、研究する方なので、観客を驚かそうというシンプルなアプローチではなく、1から10まで全て頭の中で細かく設定して、きめ細かく描写されているなと思うんですね。それが監督の高い創造性であり、独自性につながっているんじゃないかと。だから、チャン・ジェヒョン監督にしか描けないサスペンス・スリラーというジャンルがあるのだと感じます。
──大きなリスクを背負いながらも桁違いの報酬の依頼を引き受けようとする巫堂ファリムをはじめとする登場人物たちは、とても信頼できると感じさせるキャラクターたちでしたが、彼女の仕事ぶりには共感しましたか?
ファリムの仕事に向かう姿勢にはかなり共感しました。職業があるということは、それを通してお金を稼ぐためなので、稼ごうとすること自体は、私は全く悪いこととは思いません。とにかく自分に任された仕事を責任を持って実行しようとする態度や、思いやり、そして職業精神のような、そういうプロとしての流儀が本当にかっこいい人物だなと思いました。そういう点では、私もそうなりたいし、そのための追求をしている気がします。
──巫堂ファリム役を演じるにあたり、実際の巫堂たちの家を訪ね、話を聞いたそうですが、彼女たちとどんな対話があったのでしょうか。
まず技術的な部分で色々と教えていただいて参考にしましたし、巫堂の方々と一緒に長い時間を過ごしながら、人生についてもたくさん会話をしました。全員がみんなそうだというわけではありませんが、巫堂になるまでは簡単な道のりではなかったという話も多く聞きましたし、巫堂になると決心した後の、職業に対する態度やどれだけ真剣に心を込めて仕事をしているかなどを対話を通じて知ることができました。おかげで、ファリムの気持ちをさらに理解できるようになったと思います。
──劇中、伝統衣装の足元から白のコンバースが見える姿で行っていた「クッ」と呼ばれるテサルお祓いの儀式が鳥肌が立つほど生々しく、見入ってしまいました。振り付けや動きはどうやって作り上げていったのでしょう?
テサルお祓いの儀式の中には、様々な大きな動作とパフォーマンスと順序があるんですね。実際は、かなり長い時間をかけて行われるそれらのことを短めにぎゅっと凝縮させて見せなければいけませんでした。なので、監督と巫堂の先生と私の3人で話し合って相談しながら、どの動きは入れて、どの動きは外すべきかを調整しながら作っていきました。
──韓国では、本作や『ソウルの春』など、中年やシニアが主人公の作品が大ヒットしていますよね。60代や50代のチェ・ミンシクさんやユ・へジンさんといった先輩方がとことん危機に立ち向かっていく様子にエネルギーをもらいました。キム・ゴウンさん自身は、そういった先輩方の存在にどんな影響を受けていますか?
若い頃は、そういう先輩の方々がいると、私もああいう俳優になりたいと夢見て、研究していたものですが、今は、自分が道に迷ったような瞬間に先輩方を見上げると、答えがあるような、安定感を与えてくれる存在だと思います。自分が間違っているというとき、うまくやっているのかを確認したいとき、彼らを見上げて眺めると、自分を客観視することができる。なので、自分にとっては教科書というか、お手本のような方々です。
Text&Edit_Tomoko Ogawa