高橋一生さんは勇気ある人だ。皆がなんとなくしてきていること一つ一つを問うて、納得する道を選ぶ。
一、むやみに人に同調しない。
「高校生の頃から僕、共有というのがダメだったんです。『これ美味しいよね』『そうだね』というと、それ以上話すことがなくなる気がします。それはつながっている体を成しているけれど、実際にはつながってない。『こういう理由で僕は美味しいと思う』『私はそうは思わないけれどこう感じる』。いちいち意見を戦わせる必要はないけれど、自分の意見を言うことって大事なんじゃないかと思うんです」
二、本当に好きなものしか持たない。
「年を重ねるごとに、何をおしゃれしてんだ!と自分ツッコミが入ってきてしまって。だから服装も結局、Tシャツとデニムに落ち着きました。夏は雪駄。気に入った服は同じものを3着買って、補修しながらボロボロになるまで着ます。そして時々断捨離をする。迷ったものは捨てる。そうしてクリーンアップすると、本当に着たいものだけ残るんです。服だけでなく何でも、思考の上でもそういうことをやっている気がします」
三、「お疲れさま」は言わない。
「大河ドラマの撮影のとき、伝統芸能の先生から『疲れる=取り憑かれるという意味だから、口にしたら余計疲れちゃうよ』と教えてもらいました。僕は影響されやすいので(笑)、以来仕事終わりは『ありがとうございました』と返しています」
ほかにも、俳優は演じる時が仕事、私生活を見せる必要はないんじゃないかとSNSもブログもやらない。
「別に、やっている人を否定するわけじゃないんですよ」と前置きしながら。
「こういう話をすると、『ストイックですね』と言われちゃうんですが、自分では好きで心地よいからやっているだけで、そんなつもりはないんです。人格なんて周囲がつくるものですから。そんな僕を『面白い』という人もいれば、『回りくどい面倒くさい奴』と思う人も(笑)」
それはそれで構わない。高橋さんはただ、自分に嘘をつきたくないだけなのだ。『民王』の秘書・貝原、『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』の鬱屈した青年・佐引、『僕のヤバイ妻』の怪しい隣人・和樹……、高橋さんが演じる人物は「何かある」と思わせてくれる。それは、高橋さんが周囲に流されずに積み上げてきた、人間的厚みに裏付けられているんじゃないか。
「そんなふうに思っていただけるのはすごくうれしいけど、僕の底は浅いです(笑)。ただ、役の上で裏があるような人物に見せるようにやっているだけで」