清少納言の頃、月と蛍が照らした青の世界に、 いつからか無数の街明かりが輝いている。 一番星よりも早く艷やかな赤が灯る、東京の夜へ。
SUMMER NIGHT TOKYO GUIDE 夏は夜の動物園と水族館。

夜に蠢くものたち。
眠りにつく夜の森や、真っ暗な海の中を知る人は少ない。
サル山に西陽が射し、ゾウやゴリラの森から太陽が去ると、動物たちの夜という未知の時間が始まる。夏の7日間だけ、開園時間を延長する上野動物園の夜の姿もさまざまだ。暗くなるのを待って、目を光らせ騒がしく鳴き始めるフクロウ。長い首と足を折り曲げて眠りにつくキリンを見ることもできるかもしれない。飼育舎の浅い池の水面がキラキラと揺れる夕暮れ時、ベニイロフラミンゴの鮮やかなピンクも、暗がりに一際、色めく。昼間は騒々しい彼らも、夜は眠りに近づいていく。くねくねと首を曲げ、羽に顔を埋めながら片足立ちで眠るのだ。なんて器用なんだろう。しかもこの色は、フラミンゴが食べる藻などによってつくり出される、いわばサバイバル力の証。オスは色が濃いほどモテる、その感覚がヒトながらなんとなく共感できるのが不思議だったりして。
「上野動物園」暗がりにピンクが映えるベニイロフラミンゴ。イベント開催中の展示詳細は、ホームページなどでの発表を確認とのこと。
住: 東京都台東区上野公園9-83
☎: 03-3828-5171
営: 9:30〜20:00(8月10日〜16日の「真夏の夜の動物園」期間中。入園は1時間前まで)、通常は〜17:00
休: 期間中無休(通常は月)
一般 ¥600。
葛西臨海水族園でも、夏には夜の開園がある。水族たちの夜もまた幻想的だ。水槽の照明が消え、サンゴ礁に隠れて休息モードに入る魚たちがいる一方で、暗くなる直前にハタの仲間のバターハムレットが繁殖活動を始めたり、昼間は隠れていたアカイセエビが岩陰から出てきたり。マグロやサメが相変わらず休まず泳ぎ続けていたり。121羽のフンボルトペンギンと36羽のフェアリーペンギンの眠る岩場にも暗闇が訪れる。フンボルトペンギンが鳴き交わす声は静まり、みんな水から陸に上がってペタペタとそれぞれの巣穴に帰っていく。世界に18種いるペンギンのうちでもっとも小さなフェアリーペンギンは、木陰の暗がりを寝床にしているようだ。夜が更けてくるとみな安心したように、腹ばいで眠り始める。お腹が大切なのを本能的に知っているのか、冷たくなった地面にくっついて熱を逃がそうとしているのか。うとうと微睡みながら、どんな夢を見ているのだろうか。夜への想像は尽きない。
「葛西臨海水族園」暗くなるにつれ岩色に馴染むフンボルトペンギン。イベント開催中の展示詳細は、ホームページなどでの発表を確認とのこと。
住: 東京都江戸川区臨海町6-2-3
☎: 03-3869-5152
営: 9:30〜20:00(8月11日〜16日の「Night of Wonder」期間中。入園は1時間前まで)、通常は〜17:00
休: 期間中無休(通常は水)
一般 ¥700。