とんかつ屋の三代目跡取り息子・アゲ太郎が、とんかつもフロアもアゲられる“とんかつDJ”を目指す……そんな、音楽を目一杯楽しめる新作コメディ映画『とんかつDJアゲ太郎』。このメインキャストである北村匠海さん、山本舞香さんがそれぞれ、GINZAのためだけにプレイリストを作ってくれました!テーマはもちろん「アガる曲」。今回は北村さんのセレクトです。
北村匠海の「アゲ」なプレイリスト。気持ちに寄り添うノスタルジックな10曲

「このプレイリストはノスタルジックなイメージで作りました。テクノとか4つ打ちも好きなんですが、僕の中ではアゲ曲って、そういうテンションが高いものだけじゃなくて。感傷にふけってしまう音楽というか、落ちているマインドを救い上げてくれるようなものだったりもします。僕自身、今回演じたアゲ太郎のように、日常的にテンションアゲアゲではなかったりするので(笑)。聴く方の沈んだ気持ちを上げてくれたり、寄り添ってくれたりしそうな曲を集めました」
Playlist
01 Marvin Gaye / What’s Going On
「マーヴィンは自分にとって、ソウルというジャンルにおける音楽的支柱です。特に『What’s Going On』はボイトレで歌ったりした思い出深い曲でもあり、聴くと心が上がります。昔は洋楽っていうと、オアシスやビートルズなどブリティッシュ・ロックなイメージだったんですけど、10代で初めて聴いたマーヴィンをきっかけにソウルフルな音楽が好きになって。最近だとネオ・ソウルという次世代のジャンルも生まれ、ガラント(Gallant)というシンガーがかっこよくて注目しています」
02 Gus Dapperton / Post Humorous
「ちょうど僕と同い歳なんですよね、ガスは。存在は昔から知っていたんですけど、ちゃんと聴くようになったのは最近。この曲は、リリックビデオが自粛期間中に出ていて、ガスや彼を取り巻くスタッフさんたちがいろんな場所で歌っているリモート動画を繋ぎ合わせたもので。だから聴くと『音楽で人をつなげられる』という感覚になれたんですよね。音楽は言語に関係なく、いろんな仕方で思いを届けられるんだなと実感できた、今多くの方に聴いてほしいヒット曲です」
03 山下達郎 /
ノスタルジア・オブ・アイランド
「このプレイリストの中心的な曲。ほとんどインストで9分半と長く、曲調や雰囲気が途中でがらりと変わったり、エフェクトのかかったご本人の歌も少し入っていたりして、1曲の間にいろんな感情にさせてくれます。ライブにも行ったことがありますが、山下さんの音楽はいつ聴いても新しい。ほとんど歌わずしても、感情がバシバシ伝わるのって素敵だなと。あと、僕の名前には『海』と入っていて、自分にとって特別な場所だったりするので、最初と最後が波の音というところにも思い入れがあります」
04 LANY / Super Far
「選曲を考えていた最中、雨が降っていたんです。その影響で“流れていってしまう”みたいな雰囲気が感じられるこの曲も入れました。ネガティブをポジティブに変えていくきっかけになるようなエネルギーがあるなと感じていて。レイニーの音楽はいつもキャッチーなんですけど、テンション的に無理やり感がないというか。聴いているこちらのムードに合わせてくれるという印象で、すごく好きなバンドです」
05 小袋成彬 / E. Primavesi
「小袋さんの書く詞はとても詩的。まるで物語を朗読しているような緊張感があって、自分も作詞をする身としては、すごいなと思うことがたくさんあります。この曲で言うなら、たとえば『雨の渋谷』『たまにしか飲まない緑色のテキーラ』など日常的な描写が続いたかと思えば、サビでは『どうせ酔えない美酒』とグッとドラマチックになる、とか。音楽面でもソウルやR&Bなど多ジャンルの影響が感じられて。小袋さんはコラールというジャンル(ドイツのルター派教会で歌われる賛美歌)をよく聴くそうなんですが、そういうルーツをも感じさせる、かっこいい曲です」
06 藤井風 / 何なんw
「元気をくれる曲なので、小袋さんのすごく引き込まれる世界観から、今度は一気に抜け出すようなイメージで選びました。藤井さんはそれこそ同い年。同世代で一番刺激的な方です。彼にはものすごい武器があって、おしゃれなコードを多く使うのに、歌詞は等身大でキャッチー。そのギャップが魅力だなと。とても23歳とは思えないような雰囲気を持っていて、音楽的に”ものすごい人の登場”という感じが刺激的で、よく聴いています」
07 TOCCHI / これだけで十分なのに
「今時のメロウな曲調のヒップホップなんですが、歌詞の『自分には愛だけで十分なのに』っていうごくシンプルなメッセージに、僕はすごく惹かれました。ストレートには言わないで『これだけで』って言っているところも含めて。ヒップホップってただクールなだけじゃなくて、メッセージ性が強い曲が多いジャンルですよね。そこをあえて鋭いリリックではなくて、全体を通して優しい言葉で歌っているのが逆にかっこいいし、今の時代に大切なことだなとも思います」
08 ハナレグミ / 360°
「ハナレグミさんのことはファンクバンドのスーパー・バター・ドッグ(SUPER BUTTER DOG)にいた頃からファンです。いつもシンプルなコードの気持ちいいメロディに乗せて、一種の“温かさ”というか、普段感じているようで意外と感じられていないことを歌っているなぁと思うんです。とりわけ『360°』が入っているアルバム(『What are you looking for』)が一番好きで。『おあいこ』とか『深呼吸』とか、もっと有名な曲もありますが、僕は『360°』を今一番聴いてほしい。ほっとした気持ちになれます」
09 kiki vivi lily / カフェイン中毒
「僕もコーヒーが大好きで飲まないと気がすまない!みたいなタイプだから、この『カフェイン中毒』を選びました(笑)。女性ヴォーカルの音楽も普段からチェックしているんですけど、キキヴィヴィリリーさんのこともこの曲で知ってからよく聴いているんです。声がかわいらしいのにかっこいいし、歌詞のキャッチーさもツボ」
10 七尾旅人 / リトルメロディ
「赤ちゃんの声から始まる、“小さな誕生”を祝う曲。高校生の頃に初めて聴いたら、悶々としていた気持ちが晴れた部分があって。当時10代の僕は、20代の今以上に何かに悩んでいたり、自分で説明できないことにイライラしたりしていました。自分の未来がどうなるかなんて考えもできなかった中でこの曲に出合って、生まれ直せたような気がしたんです。
そんな感覚を今年、弟にも味わってほしくなって聴かせてみたら、泣いていました。僕も聴くとなんかこう、訳もわからず涙が出てしまう瞬間があって、この曲にはそういう力があるんだなと。だから、プレイリストの最後に持ってきました」
『とんかつDJアゲ太郎』
原作: イーピャオ、小山ゆうじろう『とんかつDJアゲ太郎』(集英社少年ジャンプ+)
監督・脚本: 二宮健
脚本協力: 喜安浩平
出演: 北村匠海 山本舞香 伊藤健太郎 加藤諒 浅香航大 栗原類 前原滉 池間夏海 片岡礼子 ・ ブラザートム 伊勢谷友介
配給: ワーナー・ブラザース映画
10月30日(金)全国ロードショー
©️2020イーピャオ・小山ゆうじろう/集英社・映画「とんかつDJアゲ太郎」製作委員会
agaru-movie-tda.jp
🗣️
北村匠海
1997年生まれ。東京都出身。2017年に主演を務めた映画『君の膵臓をたべたい』で、第 41回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。2020年は『サヨナラまでの30分』、『思い、思われ、ふり、ふられ』、『とんかつDJアゲ太郎』と主演作が立て続けに公開。公開待機作に『さくら』、『アンダードッグ』(ともに2020)、『砕け散るところを見せてあげる』、『東京リベンジャーズ』(ともに2021)など。ダンスロックバンド「DISH//」のリーダーでもある。
Edit: Milli Kawaguchi