命の源の温泉を守るため、そしてこの町を守るため、高橋さん(角田晃広)は不正を暴けるのか。『ホットスポット』(日テレ 毎週日曜よる10時30分〜)10話(最終話)を、ドラマを愛するライター・釣木文恵と、イラストレーターのオカヤイヅミが振り返ります。9話レビューはコチラ。
最終話『ホットスポット』をもっと語りたい!30年後も変わらない日常の美しさ
ドラマの中では、最初からSFが普段の生活に溶け込んでいたのだ

考察『ホットスポット 』10話(最終話)
最終話でもまだ登場する
「SF」な人たち
さかのぼること約1カ月前、『ホットスポット』7話放送日。ドラマ内で「富士山の日」に触れられていた2月23日は、山梨県甲府市では「甲府UFOの日」という記念日になっているらしい。ちょうど50年前の1975年2月23日、ブドウ畑で小学生がUFOとそこから降りてきた宇宙人を目撃したからだとか。ドラマで描かれる富士浅田市のモデル、富士吉田市からは少しだけ離れているけれど、まあ富士山の近くは昔から、そんなふうにSFに馴染みがあるのかもしれない。
ドラマの登場人物も、それを観ている私たちも「SF関係がゆるゆるに」なっているところを突いて、最終回にも新たにSF要素がどんどん登場した。4話で「角部屋には霊が出る」とウワサになっていた301号室。ホテルオーナー(筒井真理子)の不正を暴くため、みんなの協力を得て会社に侵入するもうまくいかなかった高橋さん(角田晃広)が支配人(田中直樹)の好意で泊まらせてもらったこの部屋に、本物の幽霊(うらじぬの)が出る。しかし、明日の朝番に備えなくてはならない高橋さんに一喝され、消えていく。
「そもそも棚が違う」
という高橋さんの心の声は、未来人や超能力者が現れた際にも言っていた「自分はノンフィクション」という主張からくるものだ。
自身をタイムリーパーと名乗り、すでに解決したホテルの売却阻止を真剣な面持ちで依頼する男・古田(山本耕史)も登場。9話でカバンからぶら下げていた「F」のキーホルダーは自身のイニシャルだったのだ。『ブラッシュアップライフ』(2023)で一瞬だけ登場したタイムリーパー(浅野忠信)を思い出さずにいられない、贅沢なシーンだった。
さらには、清美(市川実日子)の元夫(大倉孝二)と娘・若葉(住田萌乃)も宇宙人の子孫であることが判明。1話冒頭、若葉がホテルのアメニティの化粧水を使っているシーンがごくごく日常の顔をして流れていたけれど、あれはもうすでに「宇宙人が温泉で回復する」様子の片鱗だったのだ。このドラマの中では、本当に最初からSFが普段の生活に溶け込んでいる。高橋さんのいう「自分はノンフィクション」は、あながち間違いではないのかもしれない。だとしたら超能力者も未来人もタイムリーパーも幽霊も、この世界では同じノンフィクションだ。
Edit_Yukiko Arai