ソロアーティストとしてはもちろん、millennium parade、Black Boboiのメンバーとしても活躍し、映画『竜とそばかすの姫』では初の声優に抜擢され、活躍の場を広げているermhoiさん。2021年12月15日、ニューアルバム『DREAM LAND』をリリースしました。アルバムのこと、ジャンルも地域もさまざまな音楽的ルーツのこと、そして、愛してやまない映画のことなど、3回に分けてたっぷりインタビュー。3回目は、映画音楽についてとことん語ってもらいました! 1回目、2回目のインタビューもぜひチェックして。
ermhoiさんニューアルバム『DREAM LAND』インタビュー。Vol.3 ヨハン・ヨハンソンにハンス・ジマー。思わずシビれた映画音楽たち

──音楽以外の趣味って何かありますか?
なんだろうなあ。最近は麻雀をよくやってますけれど(笑)。
──麻雀!
Black Boboiのメンバー(小林うてな、Julia Shortreed)とか、ほかの友達とかもみんなで(笑)。あとはやっぱり、映画を観ることですかね。
──映画といえば、細田守監督の『竜とそばかすの姫』で声優デビューもされましたよね。そもそも声優は初体験ですよね?
初めてです。こんな未来があったなんて驚きです(笑)。きっかけは、(主題歌を担当した)millennium paradeのつながりで、オーディションを受けないかと。気づいたらペギー・スーになってた、という感じです(笑)。それもギリギリまで知らなくて。
──声優をしてみて、どうでしたか?
不思議な体験でした。マイクに向かって声を出すっていうのはよくやっているので、慣れてるはずだと思ったんですが、演技をしなくちゃいけないし、絵とタイミングを合わせないといけないし。こうやって普段観てるアニメは作られてるんだなって。ものすごいことしてるんだなって。結構、難しかったです。
──アニメは好きですか?
好きですね。ジブリのアニメは子どもの頃から観ていたし、(『竜とそばかすの姫』も監督した)細田守監督の『サマーウォーズ』とかも好きでしたし。
──そして、映画『ホムンクルス』では、millennium paradeの江﨑文武さんとともに音楽を担当されました。どうでしたか?
いろいろなやり方があるなと思ったんです。映像に完全に合わせていくパターンと、その背景を匂わせる感じのパターンと。私たちは映像に合わせつつ、これからの展開をちょっと予見させるものにしてみたんですけど。映画音楽を作るのは初めてではありましたが、私は普段から作曲していると無意識のイメージが浮かんでくるタイプなので、いつもやっていることと近いなと思いましたね。
──ちなみに、どんな映画が好きなんですか?
テレンス・マリック監督の映画が好きで。『天国の日々』をリバイバル上映で観たんですが、それに結構、衝撃を受けて。
──『ツリー・オブ・ライフ』でカンヌのパルムドールを獲ったテレンス・マリック。『天国の日々』は1978年の映画ですね。音楽がエンニオ・モリコーネで。
ストーリーも素晴らしいですが、音楽も。やっぱり、音楽のいい映画がすごく好きです。『ブレードランナー』とか。
──リドリー・スコットの1982年版のほうですか?
そうです。音楽はヴァンゲリスだったんですが、続編の『ブレードランナー2049』は、ハンス・ジマーとベンジャミン・ウォルフィッシュが音楽をやっているんです。本当はヨハン・ヨハンソンがやるはずだったんですが。
──『ブレードランナー2049』は監督がドゥニ・ヴィルヌーヴ。ドゥニといつも組んでいるヨハン・ヨハンソンが最初は進めていたみたいですね。でも大詰めのところで降りてしまった。ドゥニがヴァンゲリス的なものを求めていて、そこがうまく噛み合わなかったようで。
だからジマー先生が登場したんだ(笑)。
──ハンス・ジマーの音楽って、観る者を不安にさせる音楽ですよね(笑)。
ドキドキさせます(笑)。だから、『ホムンクルス』を作るときも、ジマー先生の音楽を結構参考にしたりしたんですが、やっぱり、スタイルがあるじゃないですか。映画のスタイルもありますし、『ホムンクルス』の場合、もっとポップな要素が入ってたほうがいいなって、結構ビートっぽいものを入れてみたりしましたね。
──ermhoiさんはジャン=ピエール・ジュネの『アメリ』を観て、映画音楽の世界に魅せられたと、以前のインタビューでおっしゃっていました。
そうなんです。観たのは小学生の頃だったかな。当時、父の仕事仲間にフランス人がいて、ピアノを弾く人だったんです。私たちの家に来たときに『アメリ』のテーマ曲を弾いてくれて、「あれ? 映画の音楽を弾いてる!」って、なんかちょっと不思議に感じたんです。子どもだったので、映画音楽が普通に弾ける身近なものだとは知らなかったから。そうしたら、その人が『アメリ』の楽譜をくれて、それで私自身も練習して。で、『アメリ』がかわいらしい映画、というだけじゃなくなったというか、音楽を通して自分の中の大事なポジションに収まったんです。
音楽を作るようになってからは、「この映画はどうやって音楽を作っているのか」というところが気になるようになって。(2018年に亡くなった)ヨハン・ヨハンソンの監督デビュー作にして最後の映画『最後にして最初の人類』が今年7月に公開されたんですが、観たらもう衝撃受けて。それからは、ヨハン・ヨハンソンが音楽をやった映画をチェックするようになったんです。いちばん最近は、『マンディ 地獄のロード・ウォリアー』を観て。だいぶグロテスクなので、血が苦手だったらおすすめしないんですが(笑)、ニコラス・ケイジが出てて、めちゃめちゃカッコいいので、映画が好きな人にはぜひおすすめしたいんです。音楽も、びっくりするぐらいカッコいいので。
──かなりのスプラッターな映画ですよね(笑)。でも、音楽がいいと聞くとすごく気になります。
ホントすごいんです。「このシーンに、こんなエモい音楽つけるの!?」みたいな。そのバランスがめっちゃいい効果を出していて。あと、『アンカット・ダイヤモンド』という映画で、ワンオートリックス・ポイント・ネヴァーという人が音楽を担当してるんですが、これはもう、ミュージシャンとしての個性が出まくってて、全然(映像に)合わせにいってないのが面白いという(笑)。
──へえ〜! でも確かに、映画の良し悪しって音楽が結構左右してたりするんですよね、実は。クリストファー・ノーランの映画もハンス・ジマーの音楽があってこそ、という部分もありますし。
『ダンケルク』なんかもう音楽がずーっと鳴ってますよね。秒針の音とともに。映画としてめっちゃ好きなんです。
──これからは映画音楽ももっと手がけてみたいですよね?
やりたいです。でも、もっと勉強したいなとも思ってます。音楽の教育をちゃんと受けてないので。ちょっと不気味な映画やシリアスめの映画の音楽をやってみたいですね。
INFORMATION
ermhoi『DREAM LAND』
2021年12月15日発売
PECF-3263 / ¥3,300
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ermhoi
日本とアイルランド双方にルーツを持ち、独自のセンスで様々な世界を表現する、トラックメーカー、シンガー。2015年、1stアルバム『Junior Refugee』をSalvaged Tapes Recordsよりリリース。以降イラストレーターやファッションブランド、映像作品やTVCMへの楽曲提供、ボーカルやコーラスとしてのサポートなど、ジャンルやスタイルに縛られない、幅広い活動を続けている。2018年に小林うてなとjulia shortreedと共にBlack Boboi結成。フジロック19’のレッドマーキー出演を果たす。2019年よりmillennium paradeに参加。2021年3月にデジタルシングル「Thunder」をBINDIVIDUAL Recordsよりリリース。8月に「Mountain Song」、10月に「埋立地」と立て続けにデジタルシングルをリリースし、12月15日にニューアルバム『DREAM LAND』をリリース。