日本の音楽シーンで、メカニックな機材を操るエレクトロニック系女性ミュージシャンの動向が活発化。その中でもグローバルに活動する、比類なきプロデューサー兼DJのサファイア・スロウズをご紹介。
世界へ羽ばたく日本人女性音楽プロデューサー Sapphire Slows サファイア・スロウズにフォーカス

2011年頃から、楽曲制作、プロデュース、録音までを自室で行うDIYな女性ミュージシャンが数多く台頭し、音楽業界に新たな風を吹き込んだ。その第1波としては、海外のグライムスやローレル・ヘイローたちである。前者はファッション業界からも愛され〈ステラ マッカートニー〉の香水キャンペーンのモデルを務めたり、さまざまなブランドのフロントロウに座りポップアイコンとしての地位を確立。後者はよりアンダーグラウンド志向で、カラフルなテクノサウンドを追求。地道に制作に励みライヴを行っている。第2波としてはここ日本でポップミュージックを奏で着々と知名度を上げているZOMBIE-CHANGやマイカ・ルブテたちである。そんな中、海外勢と時を同じくしていち早くデビューし国外のレーベルとも契約するサファイア・スロウズをご存知だろうか?
新作を発表するタイミングで彼女にフォーカスしてみよう。
サファイア・スロウズは、80年代のシンセポップを彷彿とさせる歌モノから、テクノ、エクスペリメンタル、アンビエントなどの側面を持つエレクトロニックミュージックを鳴らす27歳。これまでに北米、ヨーロッパ、中国、日本ツアーを達成しただけでなく、2015年には狭き門であるレッドブル・ミュージック・アカデミーの日本代表に選出された才女だ。そのキャリアはどのようにして幕をあけたのだろうか?
「東日本大震災が起こった6年前にいつ何が起こるかわからないから、やりたいことをやるべきだと決心したんです。それでジャーナリストになる夢をあきらめて音楽の道を選びました」
そう語る彼女は原宿のレコードショップ、ビッグラブを運営する仲真史の目に留まり2011年同名のレーベル初の日本人アーティストとしてデビューすることに。その後は自身がファンだと語るLAの〈Not Not Fun〉にデモテープを送ると、見事レコードリリースの切符を手にすることになる。憧れを実現に導くことができるのも彼女の実力のひとつだ。3月末にはドイツのレーベルからアンビエントのトラックを収めた『The Role Of Purity EP』をリリースした。
「リラックスする時にアンビエントを聴くようになって。それでインスピレーションが湧いて曲にしました。海外だったらインディはクールな存在だけど日本だとアマチュア扱いという認識の違いに苦労しますね。それに、まだまだ海外アーティスト至上主義なところがあるからこの問題と向き合ってシーンを切り開いていきたいです」
5月には東伊豆のフェス、レインボーディスコクラブへの出演も決定し、今年前半にもう1枚リリースを予定しているというので今後も目が離せない!
音数を最小限に抑えつつも、奥行きのあるアンビエントを4曲収録し新たなモードへ。
Sapphire Slows『The Role Of Purity EP』
Text: Ayana Takeuchi Photo: Cedric Diradourian