80歳の祖母と10代の孫、ジェネレーションギャップ溢れる家族の成長を描いた連載漫画『僕の八十歳のおばあちゃん』がスタート。著者であるタイを拠点にするイラストレーターユニット「Sundae Kids(サンデーキッズ)」に話を聞きました。
連載漫画『僕の八十歳のおばあちゃん』の著者・Sundae Kidsインタビュー

──いつアーティストになろうと思ったのですか?
Pratchaya(プラッチャヤ 写真左): 大学4年生のときに、広告代理店やデザイン会社で働くべきか悩んでいたんです。会社という場所への不安もありましたし、自分のイラストスタイルを依頼された仕事全部に合わせることは出来ないな、とも思っていて。そんなとき、Kavinが私を誘ってくれました。
Kavin(キャヴィン 写真右): Pratchayaに「自分達の作品をポートフォリオとして集めておくフェイスブックページを作って、いつかフルタイムの仕事としてやれるようにしない?」と言いました。それが、Sundae Kids(サンデーキッズ)はじまりです。
──漫画のストーリーはどのようにして浮かんでくるのですか?
Pratchaya(プラッチャヤ): 私たちに実際に起こったこともあれば、友人の話もあります。本や音楽、映画からインスピレーションを受けたものも。
Sundae Kidsの作品のほとんどが漫画なのは、グラフィックデザインを勉強していた時に、私が得意かつ楽しんでいた授業が「イラスト」と「広告」の2つだったからです。その両方を組み合わせられる、ストーリー性のあるイラスト=漫画という形になりました。
ただ、同じ手法が得意なアーティストやイラストレーターは世の中にたくさんいるので。Sundae Kidsならではの「ストーリー」を使って、誰よりも面白くて目立ちたいなと思ったんです。
──60万人を超えるインスタグラムのフォロワーがいることについてはどう感じていますか?
Pratchaya(プラッチャヤ): 世界中のたくさんの人が、Sundae Kidの作品を気に入ってくれているのは嬉しいです。最初は驚きました。というのも、漫画やシチュエーションの中には、タイ人やアジア人でないと少し理解しづらい部分もあるので、私たちのファンはほとんどアジア人だろうと思っていたんです。
でも、世界中のファンがSundae Kidの漫画を読んでくれていて、彼らにも同じようなことが起こっていることが分かりました。もう国や人種の境目はなく、あるのはオンラインとオフラインの間だけだと思いました。
──今回のginzamag.comでの連載『僕の八十歳のおばあちゃん』で、祖母と孫のジェネレーションギャップをテーマに選んだのはなぜですか?
Pratchaya(プラッチャヤ): 普段は若者同士のラブストーリーを描くことが多いのですが、「ジェネレーションギャップ」もタイでも日本でも共通して考えることができるトピックだと思います。私たちの社会は高齢化社会になりつつありますよね。テクノロジーと新しい考え方が、若者とお年寄りの間に大きなジェネレーションギャップを生み出しています。でも描きたいストーリーはあくまで「愛」に関するものなんです。家族の中の「愛」です。
──お二人には、何かご自身の祖父や祖母とのエピソードはありますか?
Pratchaya(プラッチャヤ): 実際の出来事にインスパイアされたものもありますが、日本人の読者の方にも理解しやすいよう、少し脚色しています。でも大幅に変えようとはしてなくて、Kavinは本人の名前からとっていますし、Maiは彼の祖母の名前です。
Kavin(キャヴィン): 僕は、いつも自分のおばあちゃんのことを少し変わっているなって思っていました。実は子供の頃、おばあちゃんは僕の兄の方が好きだと言っていたので、嫌いだったんです。(多分それは彼が長男だったからであり、ある種の中国のクラシックな文化です)。でも大人になったら、彼女のことが理解できるようになったし、僕が経験したことはユニークな文化体験だと思ったので、漫画に描こうと決めました。
──読者が主に日本人であるということは考えましたか?
Pratchaya(プラッチャヤ): そうですね。私たちの描くストーリーは中国系タイ人の視点からのものなので心配もありました。文化とか、信仰とか、年功序列とか。日本とは違う部分もあるとは思いますが、逆に私たちの文化の面白さを日本の読者の方に伝える良い機会だと思っています。
──最近のインスピレーション源は何ですか?
Pratchaya(プラッチャヤ): 何もかもがインスピレーションを与えてくれます!映画、音楽、本、人生経験…全部ですね。
──休日は何をしていますか?
Pratchaya(プラッチャヤ): コロナウイルスが流行る前は、毎週水曜には映画館に行っていました。私たちは映画が大好きなんです。でも最近はNetflixで見ています。夜になると、Clubhouseで良い部屋を見つけて、それを聞くときも。仕事がたくさんあるので、ただ休む日をつくって、家にいて何もしないだけでも、簡単に幸せになれます。
──Sundae Kidsの拠点であるタイのお気に入りスポットや過ごし方はありますか。
Pratchaya(プラッチャヤ): 私たちはバンコクで生まれ育ちました。交通量も多く、にぎやかな土地なので、休憩はビーチに行くことが多いです。お気に入りの場所はホアヒンです。コロナ前は、年に1~2回行っていました。穏やかで、美味しいシーフードがあり、毎日起きてビーチを歩くことが楽しみでした。
タイの話をするときは、ほとんどの外国人の方が映画『ハングオーバー』みたいな面白くてクレイジーな夜遊びを思い浮かべるかもしれません(笑)。そういう一面もある街ですが、タイ人の多くは夜遊びせず家で過ごすことが多いです。
──今後、作品の中で扱ってみたいメディアやテーマがあれば教えてください。
Pratchaya(プラッチャヤ):私たちは日本のアニメーションを見るのが好きなので、いつか短編・長編問わずアニメ映画を作りたいです。映画館を借りて自分たちの映画を上映できたら、最高です。
──何か挑戦してみたいことはありますか。
Pratchaya(プラッチャヤ):タイのアート業界は日本とは大きく異なります。たくさんのタイ人作家がいますが、彼らの才能を示す場所がないんです。なので、ほとんどのアーティストは海外へ行く傾向があります。
タイのアート業界にはアーティストのためにもっと多くの機会を設けて、サポートして欲しい。私たちは将来的に、この問題にもっと焦点を当てていきたいです。システムをより良いものに変えるための一翼を担えるようになりたいです。
──最後に、日本の読者にメッセージをお願いします。
Pratchaya(プラッチャヤ):ginzamag.com のために描いた漫画のストーリーは、普段Sundae Kidsが描いているものとは違うものになっています。皆さんがこれを読んで、私たちの文化をもっと知ってくれたら嬉しいです。
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Sundae Kids
アートディレクターを務めるKavin(ケヴィン)とイラストレーターのPratchaya(プラッチャヤ)によるクリエイティブユニット。イラスト、コミック、グラフィックノベルやアニメーションなどの様々なメディアで作品を発表。インスピレーションとなるのはタイを拠点にする2人の日常生活や身の回りで起きた出来事。
sundaekids.com
Instagram: @sundaekids