SNSが欠かせない存在となっている今、GINZAガールも画像加工アプリを使ってポストすることも多いはず。「シンデレラテクノロジー」というテーマで女の子の動向を研究している久保友香先生に、進化するプリクラなど、実は世界の先端を行く日本女性とヴァーチャルアイデンティティについて話を聞いた。
世界の先端をいく日本女性のシンデレラテクノロジーとは? – ヴァーチャルアイデンティティを支える最先端技術

久保友香先生
東京大学大学院情報理工学系研究科特任研究員。工学の立場から文化や流行に注目し、日本の女の子と世界に広がる「シンデレラテクノロジー」を研究。
―そもそも「シンデレラテクノロジー」とは何ですか?
久保先生(以下K) 私が考えた造語ですが、理想のアイデンティティをつくるために「外見を加工し、公開する」という新しいヴィジュアルコミュニケーション技術を指しています。
―どんなものに使われている技術ですか?
K まずプリクラやアプリの画像処理技術、次に画像処理したヴァーチャルな顔で多くの人に注目されるネット技術、そして実社会で劇的に変身するカラコンなどのプラスチックコスメ技術です。
技術革新を進めた、 盛れるプリクラ
―具体的にどのように変遷してきたのですか?
K 〝盛り〟の概念が進化を引っぱってきたと思います。日本の女の子たちが盛りという言葉を使い始めたのは、2003年頃。画像処理ができるプリクラ機「花鳥風月」の登場と、カメラ付き携帯電話が普及し、iモードでアクセスするホームページサービスで、プロフィール写真を見せるようになったことが大きいと思います。実際の自分より良く見せることを彼女たちは画像に求めたんですね。そこで、最新のプリクラを利用しよく撮れたときに「かわいいでしょ?」とストレートに他人には言えないので、「盛れた」と事実だけ述べる言葉を多用したんだと考えています。自虐と謙遜と自負とが混ざり合っているんですよね。
世界中「出すけど隠す」がキーワードに
―盛りの概念も03年頃が始まりですか?
K 広義にとらえれば、白塗りの平安時代や花魁も当てはまると思いますし、時代ごとの美人画についてもいえます。すっぴんの顔は多様性があるはずなのに、同じ時代に描かれた美人画の顔がそっくりに見えるのは、それが盛った顔であることを表していると思います。
―ヴァーチャルアイデンティティにおいて、盛りやシンデレラテクノロジーは重要な役目を果たすのでしょうか?
K 写真をネット上で公開する時代に入り、今後シンデレラテクノロジーが世界中で普遍的に求められる可能性があると思います。多次元の世界を上手く行き来できる人が優位に立つだろうといわれ、その点について、日本女性は世界に先んじています。ネット上には盛った自分を公開し、見知らぬ人に一見そっくりに見せることで、素の自分を特定される危険を回避しているんです。しかも一見他人と同じように見えつつ、身近な友達には理解される個性も出しつつ。日本女性の行動には、次の時代や技術革新のヒントが隠されているし、新たな普遍性を先取りしているんです。
―盛った自画像に近づくため、リアルでもメイクやケア法を追求する。テクノロジーとアナログを駆使し、女性たちはキレイを更新する。気負わず、じつにナチュラルに。
美人画とギャルを つなぐ“盛り”
「盛りには時代の解が存在している」という先生の考えを裏付ける納得の資料。それぞれの3人がそっくり!
上: 『ポップティーン』2011年2月号 右: 喜多川歌麿[寛政の三美人](『シンデレラテクノロジー セルフィーマシン編』より)
久保先生注目の イットガール
「デジタル技術を活用したアイデンティティの操り方が巧み」と久保先生が絶賛するブロガーの中川友里さん。最近は、iPhoneひとつで、パリコレの裏側を撮影&編集した動画も配信。
Text&Edit: Aya Sasaki