人も地球も健やかに。そんなプロダクト作りはもう当たり前といってもいい時代。各ブランドの取り組みがますます本格化している今の最新事情をお届けします。
ビューティジャーナリスト安倍佐和子さんに聞いた、クリーンビューティ最前線
ビューティ界の環境に配慮した新たな動き
コスメを土から作り出すテロワール時代の到来
ファッションシーンに定着しているサステイナビリティの流れと同じように、美容の世界にも瞬く間に広まったのが、人と環境、どちらのことも意識した「クリーンビューティ」という概念。それはもう一部のエシカルブランドだけのものではなく、業界全体の新機軸となっている。自身も何ができるかを日々考えて実践しているという、ビューティジャーナリストの安倍佐和子さんに、詳しい話を聞いた。
「少し前まで、日本ではオーガニックであればそれだけで特別であるような扱われ方をしていましたが、いま現在、そこは出発点です。〝地球環境の限界〟を示す『プラネタリーバウンダリー』という考え方に沿って、SDGsの17項目にどれだけ貢献できているのか。その辺りが企業の製品哲学になってきている気がします」
コスメの生産過程から廃棄に至るまでのすべての段階において、人と地球について深く考え、また貢献できているか。その基準で考えると、環境に負荷がかかりにくい農法で育てられたオーガニック植物や、動物由来の成分を一切使わないヴィーガンコスメもクリーンビューティに当てはまる。
「選び方がわからないという人は、海外のものだったら外箱に認証マークがついているので、それをチェックしてみては。リサイクル、アップサイクルはもちろんですが、グリーンケミストリー (抽出方法など成分を作る段階から環境に負担をかけないこと)も欠かせない要素ではないでしょうか。コスメは肌に直接つけるもの、またはインナーケアとして体内に摂取するもの。食べ物と同じように、真剣に取り組むべきジャンルなのだという意識、価値観になってきていると思います」
近年のビューティ界のムーブメントはいったいどんなものなのだろうか。
「いわゆるラグジュアリー系と言われているフランスのブランドはほぼみんな、世界有数の植物の産地に自社農園を構えて生産地から可視化させることで最先端のサステイナブルに取り組んでいます。そしてその土壌の特色や気候風土を活かして研究者や植物学者、現地の人たちと一緒に栽培を行っています。農業大国かつオーガニック先進国は、やっぱり強い。私はよく〝テロワール的なコスメ〟と言っているんですが、ワインと同様に土壌から生産過程をすべて管理することで、歴史や個性など含む土地の持つ魅力にクローズアップして、ユーザーに届けることができる。もはや大規模な〝ご当地コスメ〟ですね」
自社農園を有する海外ブランド
広大な土地に広がる大規模農園で、独自の栽培法を追求しピュアな植物を育てている。詰め替え可能になるなど、使用面での改良も進んでいる。
ナチュラル思考の小さなブランドだけじゃなく、海外の大手がこぞってクリーンビューティに向けて舵を切っている今、日本の現状は?
「国内でも、サステイナブルとパワフルな植物成分にこだわって質のよいものを生み出しているところはたくさんありますし、手に取りやすい価格のアイテムも増えてきています。たとえば地方の農家さんと契約することで地域活性化を目指す〈アルジェラン〉はドラッグストアで買えますし、このシーンを引っ張ってきたマッシュビューティーラボによる新ブランド〈ミティア オーガニック〉は、プレステージ並みの研究開発時間をかけているのに1000円台で買えるコンビニコスメ。やっと欧米に追いついてきたかな、と感じています」
ひとつの転換期を迎えているが、大きな課題となっているのがゴミ問題。
「基本ですが、まずは買ったら使い切る。それがユーザーの最低限のミッションだと思います。廃棄方法はきちんと調べ、リサイクルできるものは、ルールに従って実践する。そして買うときに、本当に欲しい?最後まで使いきれる?と〝コスメの行く末〟まで考えることが大切です」
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安倍佐和子
化粧品会社、出版社勤務を経て独立。女性誌や広告でエディトリアルライター、美容ジャーナリストとして活躍。認定ホメオパスやフィトテラピーアドバイザーの資格も。