大きな買い物をしているわけでもないのにお金が貯まらない! と言う人に限って勘違いしている「消費」と「浪費」。巷では、将来の年金が不安とかよく聞きますが、「そんな先のことわからないし、今が楽しければ幸せ!」な思考で生きる人がいるのも事実です。今回取り上げるリサさん(仮名)も、先のことはあまり考えていません。だからと言って楽観主義でもなく、そんなに金遣いが荒いタイプではないと自負する彼女。貯金のことは気になりながらも、今は人生を謳歌しているそうですが……。お金持ちの実態をよく知る経済評論家の加谷珪一先生に、働き世代真っ只中の編集Sがアドバイスを聞きました。
海外旅行もご褒美もストレス解消のため、何か問題でも?:お金に愛される夢の叶え方

編集S:銀行員の友人がいるんですけど、給料日に欲しいものを買いまくって「当分は辞められない。でも買い物して気分はいいし、とりあえず来月までは頑張れ自分!」ていう刹那的なメンタルの保ち方をしていると自分で言っていました(苦笑)。前回のひかるさんは、世間での見栄を気にして職場で着る服や住居にお金をかけすぎていましたが、これがストレス解消法にまでなってしまうと危険ですね。
加谷:仕事で行き詰まっている部分を消費でカバーしているのかもしれませんが、それはあまりよい傾向ではありません。ストレスを発散するよりも自分自身を労わるという考え方の方が良いかもしれません。
編集S:休みの日は疲れを取るためにだいたい寝ているそうですよ。一体どこでお金を使っているんですかねえ、リサさん。
貯金がなくても困ってないし何がダメか分からないリサさん・25才(仮名)
「都内の私大を卒業し、アパレル企業に就職しましたが、もっとこうビジネスウーマン!みたいな憧れがあって、ITベンチャーに営業として半年前に転職しました。以前は、販売員としてデパートの店舗に立っていて、自分のノルマを達成するためにお客様に営業をかけていたので、それが役に立つと思ったので営業職を志望しましたが、世界が違うので戸惑っています。
転職を機に渋谷近辺に引っ越したので家賃は結構高いです。手当も特に出ません。彼氏はいません。たまの休みには目が覚めるまで寝て、起きたらウーバーイーツを注文して、スマホをいじったりして家で過ごします。半年に一回くらい、自分へのご褒美で女友達と海外のリゾートに行くのが楽しみです。忙しくて買い物に行く暇もないくらいなので、お金が貯まるはずなのに、なかなか思うようにいきません」
ストレス発散のためにお金を稼ぐわけじゃない
加谷:リサさんの最大の問題は、自分が何をしたいのか、定まっていないところだと思います。ビジネスウーマンを目指してベンチャーに転職したとのことですから、仕事第一かというと、土日に仕事のスキルアップをするわけでもないし、海外旅行に行ったり(年2回は多すぎです!)と、そうでもなさそうです。
編集S:言っていることとやっていることが矛盾するタイプですね。最初のケースで取り上げた加奈さんも、続く杏奈さんも日々のお金の使い方は押さえられていて、それよりも夢や目標に対する悩みが大きかったですが、リサさんはまた別。目標や夢がなくてもそれは人の自由ですが、「仕事頑張っています、プライベートも我慢しない私サイコー!」ていうリサさんの状況は、なんかチグハグなんですよ。
加谷:自分の理想像に向けて転職をする行動力がある人なのですから、現時点での自分の優先順位を明らかにしてみましょう。目先の仕事に追われているからか、人生を中期的なスパンで考えることから遠ざかってしまっている。まずは、仕事を極めるのか、仕事はお金を稼ぐ手段として生活を楽しむのか、どちらかに決める必要があるでしょう。仕事一筋にするなら、リサさんはまだ若いですから、20代のうちはすべてを犠牲にしてもキャリアの確立に邁進した方がよいと思います。
もちろん人生において優先順位を決めるのは個々の自由です。生活を楽しむ人生に切り換えるのであれば、それで構いませんが、その場合には、お金の使い方を工夫しなければなりません。
消費と浪費は違う。その先を深掘りして
加谷:生活を楽しむ生き方で成功している人は、皆、お金の使い方が上手で、ムダな散財はしません。消費や旅行、宝飾品は、とにかく瞬間的に欲望を満たしてくれるものですが、楽しみはその瞬間で終わってしまいます。本気で生活を楽しむとなった時、本当はどんなことを楽しみたいのか、もう一度、考え直した方がよいでしょう。
編集S:リサさんのインスタを見せてもらったんですが、海外旅行中に着ている洋服とか水着が毎回違うんですよ! これについて聞いてみたら、ネットサーフィンをしていて海外旅行で使えると思ったものはすぐポチっているそうです。ご褒美の海外旅行に全力投球していますよね(苦笑)。自転車操業でも今は困っていないというのですが、このままいくとどうなるんでしょうか。
加谷:そのうち困る。それだけです。いつ困るか、は人それぞれですし、予言は出来ません。現在、彼氏はいないとのことですが、結婚を考えてよいと思える彼氏ができると価値観が変わる可能性もあります。これもいつ、どんなタイミングかは分かりません。
時間は誰にでも平等にあるもので、老いも平等にやってきます。例えば今は健康だとしても、もし大きな病気になったら治療のお金の問題が出てきます。言い始めたらキリがないことですが、リサさんの「働き方」や「振る舞い」は若くて健康体であることが前提にあるものです。その場しのぎの今の状態では、お金で買うことの出来ない、若いうちの貴重な時間さえも浪費しています。
仕事においては、若いうちだからこそ許されるやり方でいくらでも自己研鑽することができます。キャリアウーマンに憧れて転職したのなら、「○○社の営業のリサさん」みたいに入社して得られる肩書きだけでなく、実績と経験を積んでこそキャリアウーマンになれたと言えるんじゃないでしょうか?
とりあえずは、ストレスの解消法をお金のかからないことに変えることから。何に使うのかを決める必要もありませんから、浪費をストップしたら100万円はあっという間に貯まるはずです。
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加谷珪一
経済評論家。仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務に従事。その後、コンサルティング会社を設立し代表に就任、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。経済、ビジネス、マネー、政治、ITなどの分野で執筆を行っており、多くの媒体で連載を持つ。「加谷珪一の分かりやすい話」にて、お金から社会問題まで、日々情報を更新中。