“世界一有名なビーグル犬”スヌーピーファンの聖地、シュルツ美術館の分館。作品世界をさまざまな方向から体験できる楽しみに満ちた場所です。
“世界一有名なビーグル犬”ファンの聖地「スヌーピーミュージアム」
東京ケンチク物語 vol.59
スヌーピーミュージアム
SNOOPY MUSEUM TOKYO
アメリカの漫画家チャールズ・M・シュルツが1950年から半世紀にわたって連載した漫画『ピーナッツ』に登場するビーグル犬にして、野球好きの少年チャーリー・ブラウンの飼い犬。スヌーピーは、“いちばん有名なビーグル犬”とすら言われるほど、広く愛されるキャラクターだ。その世界観に浸る稀有な場所が都内にある。シュルツのスタジオのあったカリフォルニア州サンタローザに建つ「チャールズ・M・シュルツ美術館」の世界唯一のサテライト、町田市の「スヌーピーミュージアム」だ。元は2016年に期間限定で六本木にオープンした同館は、約2年半で130万人超という来場者を記録した盛況に支えられて、19年に現在の場所へ移転。六本木の旧館以来、内装設計を手がけるのは鈴野浩一と禿真哉によるユニット、トラフ建築設計事務所。建築はもとより展覧会の会場構成やプロダクトデザイン、インスタレーションなども行う彼らならではのデザインが、ここでも展開する。
建物は緑深い公園を望む3階建て。大口を開けたスヌーピー型のゲートをくぐると、天井から雲形の鏡がぶら下がっているのに気づく。見上げるとその鏡面にはおなじみの愉快な仲間たちが描かれていて、自分の姿が写り込むとその一員になったかのよう!一気に作品のなかへ誘い込まれる。建物はそこから3階へ上がり、上階の展示室を巡りながら1階のショップへと降りてくる動線となっている。約8mの巨大スタチューやさまざまなポーズのスヌーピー像が人々を出迎えるインスタレーション空間など、展示室は多様な設え。オリジナルグッズがひしめくショップでは、シュルツのタッチを活かした什器や、コミックの一コマがはめ込まれたような棚など、空間自体もファンの心に突き刺さる。館内のサインがキャラクターをあしらったデザインなのも心憎い。単に「キャラクターがかわいい」のではなく、作品と作家のエッセンスを織り込んだクリエイションである。さて館を出てあらためて建物を見る。上階部分がぐっと張り出してカーブを描く真っ白の外観自体が、スヌーピーの頭の形のように見えてくる……。「またね」と手を振りたくなるような、愛嬌をたたえた一軒だ。
Illustration_Hattaro Shinano Text_Sawako Akune Edit_Kazumi Yamamoto