1970年 撮影:岩田弘行
2024年7月6日(土)から「東京オペラシティ アートギャラリー」にて、ファッションデザイナー、髙田賢三の没後初となる大規模個展『髙田賢三 夢をかける』がスタートする。衣装のほか、アイデアの源となった資料やデザイン画、絵画作品も展示される。彼の生涯にわたる創作活動を俯瞰することで、この日本を代表するデザイナーの功績を改めて感じることができるはず。
代名詞の民族服や、大作のウエディングドレスが一堂に
1970年 撮影:岩田弘行
2024年7月6日(土)から「東京オペラシティ アートギャラリー」にて、ファッションデザイナー、髙田賢三の没後初となる大規模個展『髙田賢三 夢をかける』がスタートする。衣装のほか、アイデアの源となった資料やデザイン画、絵画作品も展示される。彼の生涯にわたる創作活動を俯瞰することで、この日本を代表するデザイナーの功績を改めて感じることができるはず。
「外国に行けるような仕事に就きたい。絵やファッションの方向がいいかな」と、海の向こうでの生活を夢見て、1960年代、単身、パリへと旅立った髙田賢三。しかし当時は「日本人はフランスではデザインできない」と言われた時代。何もできないまま帰国が迫る中、背水の陣で描いたデザイン画を、思い切って憧れのデザイナー、ルイ・フェローの店に持ち込んだことが、パリでの道を切り開くきっかけとなった。そこからの活躍はめざましく、1970年に自らのブランドを立ち上げ、“木綿の詩人”、“色彩の魔術師”と称されるなど、脚光を浴びる存在に。
『髙田賢三 夢のかけら』では、髙田の人柄がうかがえるトピックを織り交ぜながら、幼少期から学生時代、パリでの軌跡、晩年の活動までをタイムラインに沿って紹介する。また「ニット」、「ツイード」、「バルーン」といった素材や技法別、あるいはオートクチュールに対する挑戦の意気込みが感じられる「アンチクチュール」、農家の女性のスタイルを再解釈した「ペザントルック」、代名詞ともなっている「フォークロア」などテーマ別の展示もあり、“髙田賢三らしさ”がつかみやすい構成だ。彼の集大成となった〈ケンゾー〉での最後のショー「トランタン」(1990年)の映像フィルムのデジタル版も閲覧可。
見逃せないのは、1982年秋冬のショーに登場したマリエ(ウエディングドレス)の展示。約20年間にわたって集めたリボンを使った大作で、前述の「トランタン」でモデル、山口小夜子が着用したことでも有名。ドレス本体はもちろん、制作現場の写真も併せてチェックしたい。
日本人としての感性を軸に、歴史ある西欧のファッションの伝統にとらわれない作品を模索し続けた髙田賢三。どのデザインにも、半世紀前に発表されたとは思えぬ、ハッとする新鮮さが感じられるのは、彼が1970年代においてすでに多様化を体現していたからなのかもしれない。日本人ファッションデザイナーのパイオニアの作品を、ぜひ、自分の目で見てみよう。
1939年、兵庫県姫路市生まれ。文化服装学院に入学し、1960年に若手デザイナーの登竜門「装苑賞」(第8回)を受賞。渡仏して5年後の1970年、パリに自らのブランドを立ち上げる。その自由で華やかなデザインで瞬く間に人気が広がり、世界を代表するトップデザイナーとして活躍した。1999年に〈KENZO〉ブランドから退いた後も、企業とのコラボレーションやオペラ衣装の制作、新たなブランドの立ち上げなど、精力的に活動した。2020年、81歳で逝去。
1984年フランス芸術文化勲章(シュヴァリエ位)
1985年第3回毎日ファッション大賞
1998年国家功労賞芸術文化勲章(コマンドゥール位)
1999年紫綬褒章
2016年レジオンドヌール勲章(シュヴァリエ位)ほか受賞多数
©︎毎日新聞社
会期_2024年7月6日(土)〜9月16日(月祝)
会場_東京オペラシティ アートギャラリー
開館時間_11:00〜19:00(入場〜18:30)
休館日_月休(祝日の場合、翌火休)、2024年8月4日(日)
入場料_一般¥1,600
*2024年7月5日(金)までオンラインにて前売券・一般¥1,400発売中
*同時開催『収蔵品展080 となりの不可思議』、『project N 95 田口薫』の入場料を含む。
Tel_050-5541-8600(ハローダイヤル)
Text_Ayako Tada