掃除屋を辞める決断を下した裕ちゃん(柄本時生)と、店を畳むことにした心音(さとうほなみ)。大助(賀来賢人)はどうするのか。ドラマ24『錦糸町パラダイス〜渋谷から一本』(テレ東金曜深夜24時27分〜)11話を、ドラマを愛するライター・釣木文恵と、イラストレーターのオカヤイヅミが振り返ります。10話のレビューはコチラ。
背負っていた荷物を外された大助(賀来賢人)はどうするのだろう、今夜最終話
掃除屋を辞める決断を下した裕ちゃん(柄本時生)と、店を畳むことにした心音(さとうほなみ)。大助(賀来賢人)はどうするのか。ドラマ24『錦糸町パラダイス〜渋谷から一本』(テレ東金曜深夜24時27分〜)11話を、ドラマを愛するライター・釣木文恵と、イラストレーターのオカヤイヅミが振り返ります。10話のレビューはコチラ。
「それ言ったら、俺たち終わっちゃうよ」
1話で、裕ちゃん(柄本時生)が大助(賀来賢人)の言葉を遮った回想シーン。裕ちゃんが車椅子生活になってしまったきっかけを作ったのは大助だった。大助はその責任を感じて父親の掃除屋を継ぎ、裕ちゃんを誘った。
そこから、彼らは大事なことを言葉にせず、うやむやにして過ごしてきた。けれどとうとう、裕ちゃんは決断を下した。「俺、掃除屋辞めようと思ってる」と大助に伝えた。心音(さとうほなみ)の喫茶店「デルコッファー」を一人で訪れた裕ちゃんは、そんな自分たちのことを彼女に話し、心音は裕ちゃんに共感する。
「俺大助にごめんって言わせなかったんだよね。なんか言ったら、全部終わっちゃうような気がして」「だから俺、大助に掃除屋誘われたとき、ありがとうって言わなかったんだ」
大助と裕ちゃんも、大助と心音も、ごめんとありがとうを交わさないまま、なんとなくでここまでやってきた。錦糸町という街が、モラトリアムを許容してくれていたのかもしれない。現実にしっかりと向き合わず、くだらないことだけ話しながら生きていけるこの街での暮らしは、ある意味では「パラダイス」だったのだろう。けれどそのままではいけないと思ったから、裕ちゃんは居心地のいい会社を辞める決断をしたし、心音は祖父から受け継いだ錦糸町の店を手放し、新たに渋谷で自分の店を構えることを決めた。300年生きていたって、まだ生きたいと思えるほど人生は短いのだ。いつまでも立ち止まってはいられない。パラダイスから出なければならない。
大助たちが過ごした数年間には及ばないけれど、1話から11話までの約3ヶ月間彼らを観てきた視聴者としては、いっしょにモラトリアムを過ごしていたような気分だ。もう今週には、私たちもこの街を卒業することになる。
Edit_Yukiko Arai