世界各地でiPhoneによって撮影されたショートフィルムを続々発表している、Appleの「iPhoneで撮影 - Shot on iPhone」フィルムプロジェクト。その日本独自作品『ミッドナイト』が、YouTubeやABEMAで公開された。原作は手塚治虫、監督は三池崇史。物語の主人公は、深夜の東京で暗躍するもぐりのタクシードライバー、ミッドナイトだ。演じるのは、最近プロデューサーへの挑戦でも話題の賀来賢人。撮影中に訪れた新宿の変化に驚いたり、スペインのドラマにカルチャーショックを受けたり。その好奇心旺盛なさまに垣間見えた、ワクワクを形にしていく強さについて。
賀来賢人。未知に飛び込むポジティブネス
全編iPhoneで撮影! Apple制作ショートフィルム『ミッドナイト』インタビュー

──今回のオファーがあった時、どんな感想を持ちましたか?
iPhone 15 Proで、手塚治虫さんの原作マンガを、三池崇史さんが撮るっていう、情報量の多さ(笑)。そのパッケージにめちゃめちゃ興味をそそられて。ワクワクっとしたのが第一印象であり、オファーを受けた理由でした。
──原作マンガ『ミッドナイト』は読みました?
もちろんです。オムニバス形式になっていて、いろんなジャンルのストーリーがあるじゃないですか。ホラーめいた話もあれば、かなり切り口の鋭い話もあったり。だからこそ面白かったし、最終話は特にね、本当にぶっ飛んでるんですよ。いい意味で、変態な作品だと感じました(笑)。王道な部分ももちろんありながら、手塚さんが伝えたいメッセージがギュンギュンに詰め込まれているんじゃないかなと。
──iPhone 15 Proでの撮影はいかがでしたか?
絶対的な強みはやっぱり、たとえばブレーキの横の隙間など、あらゆるところに仕込めちゃうこと。その分、アングルの可能性が広がるんです。あと、いつもは大きいカメラ機材があるから、外で撮っているとロケ隊が目立つんですけど、iPhoneならさりげなく撮影できるんだなという発見もありました。
作品を観た上では、「こんなに撮れてたんだ!」と驚きました。違和感なく映画として観られる。スマホカメラというより、もう“カメラ”なんですよね。これまでも実際に長編映画やMVの撮影にiPhoneが使われてきましたけど、その理由もよくわかります。
──オリヴィア・ロドリゴ「get him back!」や、NewJeans「ETA」などのMVも、iPhoneでの撮影で話題になりました。
ね、すごくクオリティ高かったですよね。僕自身もiPhone 15 Proを持っているので、子どもを映したりしますけど、本当にハイクオリティの動画が撮れる。クリエイターが使うのにもいいんだろうなと思います。
──賀来さんは主人公のタクシードライバー、ミッドナイトを演じています。彼のようなダークヒーローを演じる面白さとは?
ダークヒーローって、往々にしてミステリアス。だから、ちょっとでも素の部分が見えるとギャップが生まれ、一気に魅力的になる。初期設定として、ちょっとズルいんですよね。噛めば噛むほど味が出るというか。
で、あの格好をして。あれは僕の中で、衣装っていうよりも“コスチューム”ですね。あそこまでキャラクター然としたビジュアルも初めてだったし、でも、映像の中で背景と馴染まなきゃいけないし。どうなのかなって正直不安ではあったんですけど、作品を観たら世界観にちゃんと融合できてたので、うん、ほっとしました。また新宿っていう街に、あのコスチュームが似合う。
──歌舞伎町やゴールデン街の辺りが映っていたり、新宿の夜景が印象的でした。
やっぱ新宿って面白いですね。改めて行って思ったけど、変わった街ですよ。だし、時にはほとんど海外にいるみたいで。今回の撮影で、とある路地に入ったら、ほぼ日本語が聞こえてこなくて。「俺は今どこにいるんだろう?」と思うくらい、多国籍なエリアでもあるなと感じました。
──普段、新宿に行くことはありますか?
あんまり行かないです。若い頃は遊ぶ場所が、渋谷派か新宿派で分かれると思っていて。僕は学生の頃からずっと渋谷派。映画館にしても、新宿にはあんまり観に行ったことないかな。おそらく当時からの刷り込みで、「新宿に行くのは危ない」って、勝手にずっと思ってるんですね(笑)。
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Photo: Wataru Kitao Stylist: Arata Kobayashi Hair&Makeup: Tatsuya Nishioka Text&Edit: Milli Kawaguchi