松村北斗さん&上白石萌音さん主演作『夜明けのすべて』(2月9日公開)は、やさしい映画だ。月に一度、PMSでイライラが収まらなくなる藤沢さんと、一見冷めた風だけどパニック障害を抱え気力を失っている山添くん。友だちでも恋人でもない二人が、同じ会社で出会い、いつしか支え合っていく。第74回ベルリン国際映画祭フォーラム部門への正式出品も決定した本作で、三宅唱監督はどんな思いを軸に、瀬尾まいこさんによる原作小説を、映画ならではの表現に落とし込んでいったのだろうか。
『夜明けのすべて』三宅唱監督インタビュー
“絆”という言葉で表せない「離れていても変わらない思いの力」を映画で描くこと
──主演の上白石萌音さんと松村北斗さんは、会社の同僚同士である藤沢さんと山添くんを演じています。お二人とのお仕事は初めてだったと思うのですが、いかがでしたか?
すばらしい俳優たちです。僕自身はもともと原作小説の二人の主人公に惹かれ、この企画に取り組んだわけですけど、今や上白石さんと松村さん以外では考えられない。今、テレビや雑誌で見ると全然違うからすごいなあとも感じるけど、取材で直接会うと「やっぱり藤沢さんと山添くんだ!」って思っちゃいますね。二人の会話は延々聞ける。
──お二人それぞれを一言で表現するとすれば?
うーん。あえて言いますが、二人ともすっごく優等生だと思いますけど、“ちゃんと変わってもいる”んですよ。
──なるほど。それは監督ご自身もそうじゃないですか? 学歴も含め。
いやいや。僕はただのつまらない優等生、です(笑)。
──きっとユニークだからこそ、今の活躍があるはずだと推測します。
一般的に、「変わってる」とか「人と違う」って恐怖かもしれない。この物語はそれで悩んでいる人たちの話だとも言えると思うんだけど、そうだと認めるのとは違う形で、自分らしくあることを描いていて。すべての人がそれぞれ変わっているはずだと思うんですよね。それが当たり前だと思うんです。全員、変わってます。
“変わってない人”なんて概念でしかない。実際には存在しないんだから。ということは、藤沢さんも山添くんも特別じゃない。つまり、彼らはすごく普通ってことです。……うーん、うまく表現できないけど、なんとなく今いいこと言ったかな(笑)。
Photo_Eri Morikawa Text & Edit_Milli Kawaguchi