「the brilliant green」のVo.川瀬智子によるソロプロジェクトTommy february6。平成を代表する歌姫について彼女を敬愛する令和のDIVAゆっきゅんが語る。
ゆっきゅんに聞く、Tommy february6リバイバルのワケ
私のTommy february6(以下、トミー)原体験はスペースシャワーTVで観たミュージックビデオ。「je t’aime★je t’aime」という曲でキキララとコラボをしたパラパラマンガ風の映像は可愛いがいきすぎていて衝撃を受けました。それ以降、釘付けで追っていますが彼女のすごさは世界観が最重要だということ。時にはアーティスト自身の存在感より概念を描くことを大事にしています。セカンドアルバム『Tommy airline』は私がお年玉ではじめて買った作品ですが、トミーの写真はほとんどなくて、特典に航空券とかパスポートをモチーフにした、ブックレットやおまけが付いた凝った作りだった。彼女が自分自身よりも大事にしたものとは、端的に言えば”ティーンの懐かしいときめきや憧れ”。ピカチュウ、ブライス、パワーパフガールズなどのキャラクター、甘いお菓子、チアガール、不思議の国のアリス、テニスコート、エアラインなどのモチーフ……箱庭のように自分が愛する概念を閉じ込めた世界は宝箱のようにキラキラと輝き、私をはじめ多くのファンの胸に突き刺さりました。日本でも、「バンドじゃないもん!」のななせぐみさん、ラブリーサマーちゃんなどがトミーファンを公言されています。最近だと、ドージャ・キャットがトミーのMVをいきなりポストしたり、TWICEのナヨンが縁ありメガネをかけたトミー風ファッションで登場したりと海外から届く話題もあり、「再熱」と言われる所以かと思います。
ダークなイメージを打ち出した別名義のTommy heavenly6はアニメ『銀魂』の主題歌を務めるなどアニメ作品に楽曲が起用されることも多かった。それが海外からの入り口になっていたのではとも推測できます。楽曲から入ってちょっとヴィジュアルも掘ってみるかと調べたら日本の「kawaii」の具現化みたいな人がでてくるのですからそれは海外の方は驚くはず。実際、ピンタレストをのぞくとトミーの画像投稿はかなり多い。2021年にソニー・ミュージック時代のMVがYouTubeで解禁されたのも再発見されるきっかけになったのでは。
またトミーは特別、新しいものを提案したわけではないのも特徴です。カイリー・ミノーグ的なシンセポップをはじめ、スタイルも70〜80年代のリバイバルなど、国と時代が違うものをオマージュしてセルフプロデュースするとそれが個性になるというのを教えてくれた。ブロケットコアやスポーツシック、ゴスっぽいメイクなど今流行っているものも、「それ、もうトミーがやってるけど?」と思えるのは、彼女の審美眼が確かで、色褪せない普遍性のあるスタイルをセンスよくチョイスしているから。また、それをハードルが高くないやり方でアウトプットしたのもお見事!というほかない。眼鏡やジャージ、制服のアレンジだとか、これなら私にも真似できるかもと思わせてくれた。トミーはこういうキャラですよ、とわかりやすく記号化しているからアイコニックなものとしてリバイバルもしやすいのかもしれません。
あと余りがんばりすぎない(というキャラ設定を順守されている)。気負いすぎない感じも、今の時代とマッチするのかもと思いました。ダンスはそれなりでいい。でも自分が好きなものには徹底的にこだわる。誰かに媚びることなくただラブリーを自分の部屋の中から発信する。すごく自由で、現代の音楽シーンでも憧れられるというのも納得の存在です。
🗣️
Tommy february
トミー・フェブラリー>> 2001年Tommy february6名義でシングル「EVERY
DAY AT THE BUS STOP」をリリースし活動開始。03年にTommy heavenly6も始動し、サウンド面でも広がりをみせた。
🗣️
ゆっきゅん
>> アイドルユニット「電影と少年CQ」として活動するほか2021年からソロプロジェクトもスタートし最新アルバム『生まれ変わらないあなたを』を9月11日にリリース。児玉雨子と共作した収録曲「だってシンデレラ」は川瀬智子オマージュのエレクトロポップな1曲。
Photo_Hikari Koki Text_Kana Umehara