有名メゾンの展示会で「実はこの生地は日本の〜」と、告白されることがよくある。トップデザイナーをも魅了するその技術とはどんなものなのか? そこで4人のデザイナーに教えてもらいました。クリエイションに欠かせない、技術や職人さんから見えてきたメイド・イン・ジャパンの底力。
JULIEN DAVID × 高橋洋装 – 世界に誇る、日本のものづくり。デザイナーが信頼する、工場やアトリエに潜む魅力とは?

2006年に来日し、翌年には自身のブランドを日本で設立したパリ出身のデザイナー、ジュリアン・デイヴィッドに、日本のものづくりの魅力を聞いた。
「原宿のストリートカルチャーに強い刺激を受けたことがきっかけで、日本で自分のものづくりをしたいと思いました。それで当時の仕事仲間に、複雑なアイテムやレディスのテーラリングに優れた工場はないかと相談したところ、高橋洋装を紹介してもらいました。早速山形を訪れ、土地の雰囲気と彼らの技術に心から感銘を受けて、すぐに共にものづくりを行っていくことになったのです」
高橋洋装が縫製した今季のアイテム。ジュリアンの幼少期のヒーロー、永井豪原作『UFOロボ グレンダイザー』とコラボレートしたブルゾン。ナイロン100%。各¥57,888(ジュリアン デイヴィッド | ジュリアン デイヴィッド 神宮前 ショップ)
初コレクションは高橋洋装が手がけたレディスのコート8型でスタート。以来、アウターを中心に関係は続いている。一目置くその技術とはどんなものなのか?
山形県酒田市にあるファクトリーを訪ねてみた。出迎えてくれたのは、代表の高橋孝夫さん。広くクリーンな部屋には、さまざまな機能を搭載したミシンがずらり。5〜6名で構成された各班が、パリコレ常連ブランドの服を縫製していた。
高橋洋装の縫製工場にて、高橋孝夫代表(左)と、息子さんで職人でもある高橋克行常務取締役。
モニター上で型紙チェック。準備が終わったら布へ写して裁断する。
「カシミヤやシルク、特注のスーパーファインコットンなど、ラグジュアリーな素材を使うのがジュリアンさんの特徴ですが、コートの襟をボディ部分に収納したい(下部写真)など、予想もつかないオーダーも。ですが、針と糸さえあれば必ずできる、と。糊でくっつけるわけにはいかないですからね(笑)」
「この縫製は非常に難しい」と高橋代表をうならせていた、立体的な襟が特徴的なコート。
高橋さんのしびれる発言。どれだけのブランドが支えられていることだろう。職人の矜持(きょ うじ)を垣間見た。
Photo: Takehiro Goto
Text&Edit: Nanae Mizushima