時代を超えて愛される歌謡曲「シン・カヨウキョク」を標榜する謎の覆面アーティストPii。2021年4月、楽曲「カキツバタ」とともに突如私たちの前に現れ、1人の女性の人生を物語る詞と、どこか懐かしさを覚えるメロディ、澄んだ歌声が注目を集めました。それから1年。今年4月に「ヒノキノキ」、7月には「花明かり」の2曲を新たに発表、ポップな楽曲と相まって、またも「Piiって誰?」が巷の話題に。トレードマークが青髪であることから、「もしかして?」と想像する人も多かったけれど、そう、PiiとはAwesome City ClubのボーカルPORINのソロプロジェクト。11月11日、初のデジタルEP『春が呼んでる』の収録曲「Baby Pink」の先行配信のタイミングで、ようやくその正体を明かしたPiiことPORINさんにインタビュー。2回目はデザイナー&ディレクターを務める〈yarden〉の話を中心に、ファッションに込めた想いをお聞きしました。1回目のインタビューはこちら。
Piiの正体判明! PORINさんインタビュー vol.2 〈yarden〉という、みんなが集まる「場」について
──ところで、そもそもの話なんですが、いままでなぜ、Piiであることを伏せていたのでしょう? そしてなぜいま、Piiであることを明かそうと思ったのでしょう?
いままで、PiiはPORINのことじゃないかと言われても、否定もしないし、自分から言うこともなかった。それは、「私が歌ってる」ということではなく、純粋に歌だけを聞いてもらいたいという思いがあったからなんです。でも、もう言ってもいいのかなと思うようになって。全部つながっているんです。Awesome City ClubのPORINも、『ドーナツトーク』でバラエティをやってるPORINも、PiiのPORINも、全部一緒だなって。
──PORINさんといえば、ファッションブランド〈yarden〉のデザイナーでありディレクターでもあります。
はい。yardenのPORINでもあります。「yard」と「garden」で「yarden」。やっぱり「庭」なんです、自分のルーツは。
──ブランドを立ち上げたのは2018年のことでしたね。
やっぱりファッションって自己表現ですし、言葉や音楽と同等の重みがあって。だから私は音楽とファッションを切り離すことができないんです。音楽と同じようにファッションをもっと発信していきたいと思ったことがきっかけになりました。
──日本女子大では被服学科で学んでいらっしゃった。
そうです。お洋服を作ることが好きで。ファッションか音楽か、どっちをやるか、ずっと迷ってました。結果、両方やろうと。でも、やるからには半端な気持ちでやりたくない。年2回、季節ごとの新作発表をして、展示会も行って。だからもう、めちゃくちゃ大変(笑)。展示会の2〜3か月前からイッキにぎゅっとやるんです、いつも。会議をして、スケッチを描いて。スタッフは4人で、すごく小っちゃい会社なんですが。
──音楽を作るときとファッションを作るときって違いますか?
全然違います。yardenで作るのは、普段自分が着たいもの、自分らしいもの。だから、音楽をやるときよりもパーソナルだし、素に近い。音楽をやるときって、ステージがあって、スポットライトが当たって、という世界なので、やっぱりちょっとカッコつけてる部分はあると思うんです。でも、yardenはリラックスモード。自分が毎日着たいものをただただ作る。
──毎シーズン植物をテーマにされていますね。
そうなんです。今シーズンはアネモネ、とか、チューリップ、とか、タンポポとか。叔母が絵を描くので、叔母にまずテーマとなる植物の絵を描いてもらい、そこからイメージを膨らませて。
──面白いなと思うのは、メンズサイズもあることなんです。ウィメンズだけではなく。
そもそも男女のボーダーを作るのが好きじゃないので、男でも女でも着られる服がいいなっていうのはそもそもあるんです。男の子服を女の子が着てもいいし、女の子の服を男の子が着てもいい、どっちでもいいんじゃないかなって。
シャツ ¥64,900、ニットフード ¥42,900 (共にアンスクリア|アマン Tel: 03-6805-0527)/パンツ ¥35,200 (ヨウヘイオオノ Tel: 03-5760-6039)/ブーツ¥74,800 (フミエ タナカ|ドール Tel: 03-4361-8240)
──アーティストとのコラボもしていらっしゃいますね。CHAIのユウキさんだったり、BiSHのセントチヒロ・チッチさんだったり。
音楽アーティストでお洋服が好きな人ってすごく多いし、服を作りたい願望が強い方も多いんです。ユウキちゃんはこれをきっかけに自分のブランドを始めることになったそうなので、うれしいなって。
──音楽ではなくファッションでコラボレートする、というのは新しい試みですよね。みんなで集まって好きなことをする「場」になっているというか。
私の祖父がそういう人だったんです。実家にすごく広いお座敷があるんですが、それはたくさんの人が集えるようにするために作ったらしく。人が大好きだったみたいなんです。私が生まれる前に亡くなってしまったので、会ったことはないんですが、私はおじいちゃんの意志を継いでる感じがしていて。形はちがうけれど、人が大好きなので、これからもどんどん人を巻き込んで表現することができればいいなって。
──最後に、ひとつ聞いていいですか? なぜ青い髪なんですか?
なんでなんだろう(笑)。でも私、もともと超保守派なんですよ、精神性は。両親も厳しかったですし。でも、Awesome City Clubでデビューすることになり、表に立つ、メジャーフィールドで戦う、そんなときに、自分の殻を破りたいという思いもあって。髪色を変えたのはそれが最初だったんです。金髪とかピンクとかいろいろやってきましたが、青がいちばんしっくりくるなって。「勿忘」のときが青髪だったので、PORIN=青のイメージが定着しましたが、一時期、イヤになってショートにして金髪にしたこともあったんです。でも、戻しました。やっぱりこれがいちばん自分らしいなって。来年は、フルアルバムを作りたいと思っています。歌謡曲って、時代にとらわれずずっと残っていく曲のだと思うので、そういうものを私は表現したい。髪は青いけど、普遍性のあるものを作っていきたいんです。
Pii 「春が呼んでる」
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PORIN
2013年東京にて結成した男女ツインヴォーカルの3人グループ、Awesome City Club のメンバー。透き通るような高音が魅力の歌声と、青い髪のキュートなルックスで人気。22年11月11日、「Baby Pink」配信のタイミングで「Pii=PORIN」であることを公表。11月30日、デジタルEP「春が呼んでる」をリリース。18年にPORIN自身がディレクションを務めるアパレルブランド〈yarden〉を立ち上げ、年に2回コレクションを発表している。11月27日まで代官山 蔦屋書店にて〈yarden〉のポップアップストアを開催。11月2日、Awesome City Clubはドラマ『モダンラブ・東京』のインスパイアソング「ユメ ユメ ユメ」をリリース。