何にもとらわれることのない自由な発想で常に進化を続ける。カラフルに彩られたアーティスト木村カエラの現在・過去・未来について。
パンキッシュな王子さま。木村カエラにインタビュー

ジャンルの垣根を超えるポップなサウンド、シンプルな言葉で綴られたイノセントな歌詞。くるくると変化するヘアとファッションも気になる木村カエラさん。気さくでチャーミングな人柄に少女のようなピュアな眼差しがとても印象的。
「物心ついた頃から、いつも音楽がありました。父の部屋は壁一面ロックのCDで埋め尽くされていて、母はビートルズの大ファン。私はファンタジックなディズニーの映画がすごく好きで、いつか歌手になることを夢見ていました。10代の後半にインディーズロックやパンク、グランジにハマったのも今のベースになっています。当時は『なんで男の子ばっかりなんだろう?ロックを歌う強い女がいてもよくない?』と思っていたので、ノー・ダウトのグウェン・ステファニーにはとても影響を受けましたね」
歌詞を紡ぐ作業は「終わらない宿題のようなもの」なのだそう。
「朝起きてから眠りに落ちるまでずっと考えています。友達とおしゃべりしていても『面白いワードないかな?』とあれこれ探している自分がいて。日常の中からふっと浮かんだ言葉が一番自然ですし、絞り出すアイデアほどつまらないものはないと思うから。大切にしているのは、子ども向けの絵本のようにシンプルな言葉と、どんな人にでも伝わる普遍性。私にとって、たとえばくるりさんの曲は、聴いたら涙が出るし、疲れた心を癒やし、きれいにしてくれる洗濯機のような存在。心が動かされるものには噓がないと思うんです。そんな歌を作れたら、そしていろんな人に届けられたらいいですね」
花柄ニット ¥123,200(ピリングス)/リング 各¥16,500(ヨウヘイ・オオノ)、陶器のネックレス ¥62,700(ジュリー・デキュバー | 共にジジナ)
2022年7月には2年半ぶりとなる楽曲「Color Me feat. マヒトゥ・ザ・ピーポー」をリリース。これまでもさまざまなアーティストとコラボレーションしてきた。
「みなさん唯一無二のエネルギーを放っていて、とてもリスペクトしています。ご一緒することで、ハイブランドの洋服を着るように、新しい自分が見えてくる。コラボする理由は想像のつかないものを作りたいから。お料理で言うと出汁に味噌を入れたら味噌汁だけど、味噌とケチャップを合わせたらどんな味になるかはやってみないとわからない。プリンに醬油を混ぜるとウニとか『もっと上にいっちゃうんだ』という想定外の結果が楽しみだし、挑戦していたいんです」
家でもそれをやっているのか尋ねると。
「いえいえ、たとえばの話(笑)。こう見えて、料理は意外と几帳面なんです」
エッセイ『NIKKI』では家族との日常が綴られていたが、私生活は音楽にどのように影響を与えているのだろう。
「プライベートも表現につながっていると思います。子どもの発想ってめちゃくちゃ面白くて、突拍子もないことを言い出すし、やりたがる。昔から〝いつまでもコドモでいたい欲〟があるので自由奔放な子どもたちが羨ましい。一緒に過ごすことで、私の目線もまた新しくなれる気がします」
ケーブルニット ¥119,350(ヴァケラ | ドーバー ストリート マーケット ギンザ)/中に着たヴィンテージの花柄ドレス ¥132,000(ジャンティーク)/ブーツ ¥99,000(マックス アンド コー | マックスマーラ ジャパン)
「エネルギーが巡る場所から 新しい虹を作っていきたい」
2022年は有観客ライヴも動き出し、自身初めてのBillboardでのライヴを成功させた。2022年の取材時はZeppでのツアーを控えて、リハーサルの真っ最中だった。
「ライヴって答え合わせになるんです。歌に込めた願いが届いたと思えた瞬間は『やっていて本当によかったな』と、なんとも言えない気持ちになります。正しかったことも間違っていたこともすべてが見えてきて一歩先に進むことができる。Zeppでのツアーは久しぶりなのでドキドキしています。私のパワーがみんなの中に入って、みんなのパワーも私に戻ってくる。エネルギーが巡るのを感じるのはすごく気持ちがいい。それができれば今回は十分かな。あと20カ月で20周年を迎えるという自分なりの節目。私にはカラフルなイメージがあるけれど、初心に返って白黒から始めようという気持ち。新曲の『Color Me』も初めて披露します。この先の未来に向けてまた〝新しい虹〟を作っていけたらいいなと思っています」
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木村カエラ
1984年東京都生まれ。2004年メジャーデビュー。U-NEXTにて「KAELA presents Zepp Tour 2022 CONTRAST」を独占配信中。