布団を被った女の子が高速道路を疾走!はたまた隕石とともに宇宙空間を浮遊する…。ミュージシャン中村佳穂さんの頭の中を“観測”するというコンセプトで制作された、スペースシャワーTVによる企画『観測:中村佳穂』の一幕である。彼女の言葉や記憶をもとに不思議な光景を旅するこの映像は、一体どのようにして生まれたのだろう。中村さん本人と、企画・演出・制作を担当した釣部東京のメンバー4名に、作品を鑑賞しながらクリエイションの過程を振り返ってもらった。
中村佳穂の脳内をレッツ“観測”!前編
制作集団・釣部東京とのコラボ座談会
──この映像は、中村佳穂さんの脳内が「思考・記憶・嗜好・言葉・メロディ」といったさまざまな角度から可視化された、ユニークな切り口で構成されていますね。
松永昂史(釣部東京) (中村)佳穂さんの「よく行く場所」「自分の部屋」といった具体的なテーマから、「好きな言葉・擬音」「心の図解」など曖昧なものまで。僕らが11個の質問を投げかけ、それらのアンサーをもとに、佳穂さんの脳内イメージを視覚化していくという流れになりました。
──とても実験的で新鮮な取り組みだと思います。この企画が実現に至った経緯を教えていただけますか?
松永 もともとはスペースシャワーTVからお声掛けいただき、よろこんで何かご一緒できたらと。それで、どんな映像を作ろうか考えていた時に、佳穂さんは普段あまり一般的なインタビューを受けていないと伺って。だったら、自分で多くを語らない佳穂さんの頭の中を映像で表現してみようと思ったんです。
中村佳穂 あはは。インタビューって、なんか照れちゃうんですよね。でも、釣部東京の4人からの質問は、答えていてとても楽しかった。初めて会った時も、皆さんで考えてくれた質問をカードにして、圧縮袋に入れて手渡してくださいましたよね。11枚のカードと、ペンや虫眼鏡も入っていた。まるで何かの検査キットみたいで、ワクワクしました。
渡部克哉(釣部東京) ふふふ。「観測」がテーマだったので、虫眼鏡も忍ばせてみました。
中村 コーヒーを飲みながらキットの説明を受けつつ、直感的に浮かんだ答えはその場で話して。それ以外は持ち帰ってから想像力を膨らませて考えました。
──釣部東京さんからもらった問いには、どんな印象を受けましたか?
中村 埋まっていた記憶を呼び起こす作業になりましたね。音楽活動を始めてからのエピソードがあまりにも濃くて、それ以前、つまり10代までの思い出はほとんど薄まっていて。中学時代の同級生のあだ名も忘れていた。なので、8番目の「一番古い記憶は?」という問い(映像内「CASE-8 一番古い記憶」)には、「えーっと」って一拍置いてしまったほど。でも、こういう機会がなければ、きっと本当に思い出せなかった。だから、すごく楽しかったです。
松永 そう言っていただけてよかった。こちらとしても、佳穂さんの答えは予想外のものばかりで面白かったです。
渡部 ほんとに。絵で表現してくれたアンサーもあったので、わかりやすくもありました。
Text: Mako Matsuoka Photo: Wataru Kitao