日本におけるフェミニズムの第一人者、田嶋陽子さんの主張はずっと一貫している。それは、誰もが社会から押しつけられる女らしさ/男らしさなどではなく、自分らしさを大切にして生きるべき!というもの。この春、デビュー作が『新版 ヒロインは、なぜ殺されるのか』として復刊された。今、田嶋先生があらためて伝えたいメッセージとは?
田嶋陽子さんにインタビュー。フェミニズムの名著が復刊
女性が「ちゃんと自分の人生を生きる」ために伝えたいこと
──1991年に初めて出された本が今年、『新版 ヒロインは、なぜ殺されるのか』として復刊されました。10本の名作映画を取り上げ、男社会による女性抑圧の形をズバズバ解き明かす、フェミニズムの名著です。
自分の本を二度読むことはないんです。出たテレビも観ないし、出した歌も聴かない。常に発展途上だと思ってるから。今回、復刊に向けて約30年ぶりに読み返してみたけど、精魂込めて書いてるから、結構面白いよね!
──はい! ちょうど1991年に田嶋先生が登場した女性誌を古本で買ったんです。これなんですけど。
なつかしい! この頃はパーマをかけていた。周りに不評でやめたけど(笑)。
──(笑)。そしたら別のページで、有名な男性写真家が「媚びない女はダメだよ」とか平気で言っていて。
わかるでしょう、私の意見が当時いかに世間から受け入れられていなかったか。でもまぁ、「男に好かれる女とは?」とか「いい意味での女の媚び」とか、こんな見出しを見たら、誰だってちょっとは読んでみたくなるかもね(笑)。でも一方で、当時、女性たちには今よりずっと活気があって、私はいろんな自治体が開く講座にしょっちゅう呼ばれていた。行っていない都道府県はないくらい。
──その活気にはどういう背景があったんでしょうか?
1985年に男女雇用機会均等法が制定されたことを機に、ずっと女性が二級市民だったという事実に気づかされた、そういう時代だったと思う。講座を聞きに来るのは専業主婦の人が多かった。「いいところにお嫁に行けた」なんて思っていたら、その生き方自体が女性抑圧の象徴だったんだから。
──「男らしさ」は自立した人間を作り、「女らしさ」は「男らしさ」を生きる人を支える人間を作る。この「女らしさ」という社会規範が専業主婦を生み出すために利用されてきた、と田嶋先生は説かれてきました。
男は働いて家族を養うために、「男らしく」たくましくなることを求められてきた。そんな男を、まるでガレー船を漕ぐ奴隷のように支えてきたのが、いわば二級市民の「女らしい」女。みんな喜んで結婚して子どもを産んだはいいけど、「あれ?」って考え始めていた。そういう時期に、クレヨンハウスの落合恵子さんが講座を企画してくれた。その時の講義内容に手を加え、出版したのがこの本。
Photo: Wataru Kitao Edit&Text: Milli Kawaguchi