NY発〈マーレット/Merlette〉から2024年春夏の新作が到着!デザイナーのマリーナが、着想源となったアートや映画、コレクションに込めた思いを語ってくれた。GINZA読者へのリコメンドアイテムも紹介。2024年4月10日(水)から16日(火)までは、「ジェイアール名古屋タカシマヤ」でポップアップ開催も。
〈マーレット〉デザイナーが語る新コレクション
2024年春夏をフェミニンに心地よく過ごす服
毎日を愛し旅を楽しむ女性のための服を作る〈マーレット〉。2024年春夏の新作には、上質な天然素材を使ったタイムレスなアイテムが揃う。ちょうど桜の季節に来日したデザイナーのマリーナ・コートバゥイ(Marina Cortbawi)が着ていたのも、凛としたステッチ模様が美しいシャツドレスだった。
──今季も、フェミニンでありながら着心地も抜群なワンピースやブラウスが充実していますね。ピンク色やプリントのものもとても素敵です。コレクションのアイデアはどのように生まれたのですか?
マリーナ まず着想源として、アボリジニ芸術家のクディジ・クングワレエ(Kudditji Kngwarreye)の絵画があります。私はシドニー出身で、彼の作品を見つけたのは地元のギャラリー。いわゆるアボリジニ・アートとは違う、様々な色のブロックをパッチワークのように並べたペインティングがとてもモダンで、一気に魅了されました。そして、面白いことに、それが私の持っている日本のブランケットを連想させたんです。
──日本の薄い布団のようなものでしょうか?
マリーナ はい。ブルックリンに日本のものを扱う骨董品屋があり、そこで買ったものです。色々な端切れが手縫いで組み合わされていて、ところどころにスタンプ(型染め)もあり、とても美しい。パッチワークのようなところがクングワレエの絵と似ていて、自分の中でリンクしたんです。そこで、彼の絵画とそのブランケットから、コレクションに使いたいカラーパレットを考えていきました。薄いピンクや青、アイボリーやベージュといった色合いです。
──まさか日本文化も繋がっているとは!他には、フランス映画もインスピレーションソースだと聞きました。
マリーナ 私の“サマータイム・バイブル”である70年代のフレンチシネマですね。特にこの一本がというよりも、その頃の映画全体のムードを参照しています。南仏が舞台で、画面の色彩は赤や青がポイントのシンプルな構成。登場人物のまとう服はエアリーで軽やか。そうした作品は私にとって常に大事なリファレンスなのですが、やはり特に春夏は取り入れたくなります。デザインのプロセスは、大体ファッション以外のクリエイション…アートや映画、音楽から始まります。なので、いつも最初はじっくりリサーチをして、そこから色やシルエットを構成していきます。
──ひとつのコレクションの背景に、アボリジニ・アートや日本の手芸、フランス映画が合わさって存在しているのですね。実にマルチカルチュラルだなと感じますが、シドニーで育ち、その後パリ、ロンドンを経てNYで暮らしているマリーナさんにとってはわりと自然なことなのでしょうか。
マリーナ そうですね。故郷のオーストラリアも、日本やアジア圏の方たちがたくさんいますし、そもそも成り立ちからして冒険気質の国なんです。私個人も、今NYに住んで16年目となり、海外生活自体は20年を超えます。そのため、多様な要素をミックスして創作していくことにはオープンかもしれませんね。〈マーレット〉では、もちろん何かひとつからデザインイメージを組み立てることもありますが、異なる複数のものを融合させていくことで、より出来上がりが豊かになるとも考えています。とはいえ、ヴィンテージや古いものから着想するとしても、現代的であることは大切。今回クングワレエ(*編集部註:画家は1938年生まれ)を取り入れたのも、彼の作品が非常にモダンな魅力を持っているからです。
──今シーズンはブランド初のデニムもデビューしましたね。
マリーナ 日常の装いを作るものという意味でデニムは非常に重要なアイテム。なので、〈マーレット〉としてはとても自然な流れでした。ブランドの象徴的ディテールでもあるティアードを加えて、ユニークでかつほんのりフェミニンさがかおるようにしました。洗いのときに水の消費が比較的少ない11オンズの生地を使う、ケミカルな加工を控えるといったことで持続可能性にも気を付けています。
──日本限定のアイテムも登場しています。
マリーナ 米国でも人気の「LANTE」ドレスを少しアレンジし、日本人女性がヒールやスニーカーなど色々な靴をコーディネートしやすい丈にしました。オプティミスティックな雰囲気を醸すターコイズカラーのラインも出ています。また、ノースリーブマキシドレスの「CARON」も日本向けに調整してみました。日本の方は肩や腕の見え具合に敏感だなと思ったので、通常のものより肩部分をやや広めに設定しました。
──日本人女性のことをすごく分かってらっしゃる…!確かに、下着の紐が見えないか、露出が多すぎないかといったことをまず気にするかもしれません。ブランド設立以来、来日も何度もしていますね。
マリーナ ユニークで素晴らしい文化を持つ国だと思います。東京以外はあまり知らないのですが、全てにおいて整然としていながらカオティックな部分もあり、賑やかな反面静謐さも存在している。そんな二面性にいつも驚かされます。オーストラリアは比較的若い国なので、茶道などの古い伝統にも憧れます。刺し子などの昔ながらの手工芸も大好きで、今回のコレクションでも参考にしているんですよ。あとは、本当に東京の方はスタイリッシュでおしゃれが好き。こう言うと語弊があるかもしれませんが、オーストラリアや他の国とは一段違うレベルにいると思います!そして、小さなものや細部への愛情も特徴的。服のステッチ、ボタン、さりげないティアードなど…。ものを作る側としてインスパイアされることが多いです。
──GINZA読者におすすめするとしたら、何を選びますか。
マリーナ 悩みますが、やはり色々なシチュエーションで活躍するシャツワンピースでしょうか。あとは今季初めて出たリネンのものや、旅行にもぴったりのスカートなどをぜひ着て欲しいです。
──〈マーレット〉ならではの、旅先でも着たくなるワードローブがたくさんありますね。ブランドはNYを拠点としていますが、GINZA読者が旅行で訪れる場合、マリーナさん的マストアドレスはどこでしょうか。
マリーナ たくさんあります!NYはいたる所に面白いものが見つかる街ですから。でも、がんばって厳選してみますね…。まず、ウィリアムズバーグにあるCafé Colette。パリのカフェのような雰囲気で、テラスもあります。ここのハンバーガーがとてもおいしいんです。オフィスのすぐ近くなので、私は毎週通っています。素敵なヴィンテージショップも多く、一押しはデンバーのFront General Store です。良質なアメリカ製リーバイスやオールドコーチなどが揃っているお店。古着屋ですがとてもモダンで、私も「今のムード」を感じ取るためによく立ち寄ります。あとは、定番ですがやはりセントラル・パーク!大都会の真ん中とは思えないほど緑があり、のどかな場所です。
ℹ️
【〈マーレット〉初の名古屋でのポップアップ開催】
期間_2024年4月10日(水)〜16日(火)
会場_ジェイアール名古屋タカシマヤ 4F ローズパティオ
住所_愛知県名古屋市中村区名駅1-1-4
Tel_ 052-566-1101(代表)
時間_10:00〜20:00
【〈マーレット〉問い合わせ】
Tel_0800-100-2274(リトルリーグ)
Photo_Hikari Koki Text_Motoko KUROKI