楽曲はもちろん、そのスタイルに憧れるミューズたち。The Last Dinner Partyを撮り下ろし。私服や衣装を見せてもらいながら、そのこだわりを聞いた。
The Last Dinner Party フェミニニティ詰まった装いでロックを届ける
海外アーティストSNAP vol.3

フェミニニティ詰まった装いでロックを届ける
無邪気に絶えず笑い合う、ザ・ラスト・ディナー・パーティ(以下TLDP)の5人。ファーストアルバムがUKチャート1位を取り、今夏は日本初公演を果たした。バロックやゴシックなどの歴史的要素を下敷きに世界観を構築し、歌詞はセンシュアルでありながら背徳的。メロディはドラマティックな疾走感を帯びる。そのファッションにも楽曲と同様マキシマリズムが徹底されている。衣装ではフリルやレースなどクラシカルなディテールが度々登場。ビスチェやロングドレスといったアイテムも特徴だ。
取材時の私服も、古着の白ブラウスやコットンドレスに〈ニューロック〉の黒い靴。全員でそろえてきたかのようだが、「たまたまなんです」とリードヴォーカルのアビゲイル(上写真ソファ右端)。
「何も示し合わせたりはしていなくて。今朝ホテルで集合したときに私たちもびっくりしました」
確かにメンバーは、音楽性だけでなく服装においても共通の軸を持つ。モノトーンやクリーム色、赤を好み、少女性と官能を織り交ぜる。オーロラ(キーボード&ヴォーカル/写真中央)曰く「"TLDPレンズ"とでも呼ぶべき視点があって。そこに、たくさんの嗜好が詰まっているイメージ」とのこと。
「ヴィンテージもみんなよく着ます。あと、まわりに才能あるデザイナーが多いんです」(アビゲイル)
そうした友人から服を買ったり、あつらえてもらったりもする。エミリー (リードギター他/写真ソファ左から2番目)も「今年のグラストンベリー・フェスティバルでは、アビゲイルの友達が人魚みたいな青いツーピースを作ってくれました」と振り返る。
「衣装は普段の服装の延長線上ではありますが、ステージの上の方がよりシアトリカルな格好をしているかも。気分も上がるし、実際、まとうシルエットによって仕草は変わりますから」(アビゲイル)
「本当に服でパフォーマンスが変化します。ビッグショルダーを着ていたら、それを強調するように動いてみたくなる、というふうに」(オーロラ)
ライヴで同じ格好を繰り返してもいいし、メンバー同士で服の貸し借りもする。初期のギグでは、衣装コンセプトを決めていたこともある。「デヴィッド・ボウイ」や「不思議の国のアリス」などのテーマで各自どう装うかを通して、互いの理解も深まった。その多様で多彩な発想を養ったのは、Tumblrだという。
「歴史上のいろんなテイストを一気に吸収できるツール。インターネットを通じて、中世からも19世紀からもヒントを得てきました。このジャンルはこの色、などの既成概念にとらわれず、むしろ対極のもの同士を合わせていきたい」(アビゲイル)

Photo_Shiori Ikeno Text_Motoko Kuroki