あるベンチを舞台に、人々の日常を時に可笑しく、時に切なく切り取ったオムニバス映画『アット・ザ・ベンチ』(11月15日公開)。監督を務めたのは、写真家としてGINZAとも縁の深い奥山由之だ。この自主制作による長編映画デビュー作に込めた、変わり続ける東京の街への思い。そして、映画作りを通して自身に芽生えたクリエイティブ面の変化について話を聞いた。
映画『アット・ザ・ベンチ』奥山由之監督インタビュー
古びたベンチから広がる5つの物語。「都会の喧騒の隙間にある“孤島”に惹かれる」
——今作は、奥山さんの普段の散歩コースにある、実在するひとつのベンチが舞台です。「変わりゆく東京の景色の中で、このベンチを作品として残したい」と企画したそうですが、その形式に映画を選んだのはなぜでしょうか?
これまで作ってきたMVやCMでは、その媒体の特性上、主体が会話になることはほとんどなかった分だけ、会話劇への憧れが強かったのだと思います。好きな映画にも会話劇の作品は多いですし、対話から立ち上がる情景を表現したいという思いがあって。そのためにはある程度の尺が必要になるので、自然と映画を選択しました。
Text_Tomoe Adachi Edit_Milli Kawaguchi