2020年、ホテルのオープンやリニューアルに沸く東京。ホテルは泊まるためだけの場所ではありません。ちょっと一杯に、ランチにと、普段使いもできるオープンな場になってきています。クラシカルから個性派まで、「ホテルの数だけ、楽しみ方がある!」を合言葉に、東京に暮らしているイタリア人BOYが日本人GIRLの友だちと体験した、あのホテルでのこんな過ごし方。
「帝国ホテル」のバーでアメリカンクラブハウスサンドイッチを食べる。イタリアンBOY・アレくんの東京ホテル探訪 vol.1

東京在住のイタリア人イラストレーター・アレくんは、ホテルとは無縁の日々を過ごしていた。その理由は単純で「なんだか敷居が高いから」。たしかに、旅行者でもないのにホテルに宿泊したり、本格的なディナーをいただいたりはハードルが高い。けれどバーで1杯なら手は届くし、館内の装飾を味わい楽しむこともできるのに。
今東京に起きているホテルの波を乗りこなさないなんてもったいない!というわけで、アレくんはライターをしている日本人の友だち・ロミちゃんを誘って、都内のホテルを訪れてみた。
帝国ホテルのバーで昼食を。
厚さ4.5センチの“アメクラ”
今回ふたりが訪れたのは、日比谷にある「帝国ホテル 東京」。今年で開業130年を迎える、都内有数の伝統あるホテルだ。ランチを食べようと、本館中2階にある「オールドインペリアルバー」へ。聞けば、平日のランチタイムは意外な穴場らしい。バーに足を踏み入れると、外で燦々と降り注ぐ太陽を忘れるほど、なんともムードのある落ち着いた空間が!
内装は、世界的な建築家フランク・ロイド・ライトが手掛けた帝国ホテル旧本館、通称・ライト館(1923年~1967年)の面影を残し、ライトの意匠をいたるところで感じることができる。店内奥の壁画やカウンター内のテラコッタなど、“ライト館”のものがあちらこちらに。壁画の前の席のテーブルも当時のもの。この席で、ライトがデザインした、背もたれが六角形の椅子に座れば、1920年代にタイムスリップした気分に浸れる。
照明を落とした店内でひときわ目を引くのは、バーカウンターを等間隔で照らしているスポットライト。バーテンダーの手元、そして、それぞれにストーリーをもった見た目美しい料理やドリンクを一層引き立てている。そんな席でいただくのは、「アメリカンクラブハウスサンドイッチ」!1920年代の終わり頃、第8代料理長の石渡文治郎シェフが「リッツ パリ」(フランス・パリにあるホテル)で出会って持ち帰り、帝国ホテルで長年親しまれている看板メニューだという。
サンドイッチを待つ間、せっかくバーなんだしと、思いきってカクテルもオーダーしてみた。アレくんは、帝国ホテルオリジナルカクテルの「マウント フジ」。1924年に生まれたこのカクテルは、ジンをベースに泡立てた卵白、フレッシュ(生搾り)のレモンジュースやパイナップルジュースなどがブレンドされ、グラスの縁にはチェリーが。純白の雪をかぶった富士山に赤い太陽が登る瞬間をイメージした一杯。見た目の可憐さとは裏腹にアルコールがしっかり感じられ、アレくんは一気に上機嫌。
ロミちゃんはノンアルコールの「シャーリーテンプル」をチョイス。ジンジャエールとザクロシロップを使っているのでしっかりと甘く、デザート感覚で飲める。お酒が苦手な人は、ノンアルコールカクテル以外にも、こだわりのフレッシュジュースもたのしめるので安心。
「マウント フジ」1,760円、「シャーリーテンプル(ノンアルコール)」1,430円 (ともに税込・サービス料別)
そうこうしている間に、アメリカンクラブハウスサンドイッチがふたりの前に。「うわあ、おいしそう……」。薄くスライスした食パン3枚をトーストして、チキンとトマト&ベーコンの2層をはさんだサンドイッチの脇に、フレンチフライがたっぷり添えられている。
「アメリカンクラブハウスサンドイッチ」2,500円(税込・サービス料別)
アメリカンクラブハウスサンドイッチといえば、口を大きく開けても収まりきらないほどの厚みがあるのが特徴だけど、“帝国ホテルのアメリカンクラブハウスサンドイッチ”は厚さ「4.5センチ」。片手で一口におさまるサイズだ。当初は知る人ぞ知るバーの裏メニューとして、常連さんがお酒と一緒につまめる“軽食”として出されていて、お腹がもたれないようにという、バーのお客さんへの配慮なのだ。とはいえ、一人で一皿食べたら大満足の量。帝国ホテル内では「アメクラ」と呼ばれて親しまれ、ファンのスタッフの方も多いそう。
「ここは日本一のバーだと思っています。働けて光栄です」
そう話すのは、若手ながらオールバックがよく似合うバーテンダーの神さん。帝国ホテルへの入社6年目を迎えた2019年4月から、念願叶ってオールドインペリアルバーへ。長年通い続けている常連さんや本物志向のお客さんが多く、まだどうしても緊張してしまうそうだが、それだけやりがいも感じるという。歴史と風格のあるオールドインペリアルバー。バータイムは少し緊張してしまいそうだけど、ランチならみんなに開かれている。「また来たいね」「恋人とデートで来るのもいいかもね」なんて話しながら、アレくんとロミちゃんはお店を後にした。
Ciao Ciao! 「帝国ホテル 東京」
ホテル探訪中に見つけたトリビア。
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【HOTEL INFO】<br /> 帝国ホテル 東京
東京都千代田区内幸町1-1-1
最寄駅:日比谷・銀座・有楽町
Tel:03-3504-1111(大代表)
www.imperialhotel.co.jp/j/
※オールドインペリアルバーは本館中2階。
営業時間:11:30-24:00(LO)
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Illustration:<br /> アレッサンドロ・ビオレッティ
1986年生まれ、北イタリア・トリノ出身。子どもの頃に祖父が持っていた、70年代に出版された日本の写真集に衝撃を受けて以来、日本のあらゆる面に興味を持つ。16歳から日本語の勉強を始め、18歳のとき初来日。2015年5月より日本在住。フリーランスイラストレーターとしての活動の傍ら、3年間のデザイン事務所勤務を経て、2019年よりイラストレーターとして独立。「POP・PRETTY・FUNNY」という3つのキーワードを軸にイラスト表現を行う。広告、キャラクターデザイン、挿絵、漫画、絵本など幅広いジャンルで活動中。
alekun.com
@alessandrobioletti
Text: Hiromi Kajiyama Edit: Milli Kawaguchi