日本でも話題に上がることも多くなってきたサステイナブル(※持続可能なという意味)。私たちも傍観しているわけにはいきません。
大好きなファッションをいきなり全部サステイナブルなものに切り替えるのは中々難しいですが、日々の生活で出来ることから始めようと決心しました。不要なものを削ぎ落としていくことでミニマルなライフスタイルにもなるし、一石二鳥です。まだまだ勉強中ですが、私が取り組んでいることを皆さんにシェアしたいと思います。前回の記事:vol.12 パワーシフト。
スタイリスト・木村舞子さんと一緒に、サステイナブルライフへの道!vol.13 なぜオーガニックなのか
スタイリスト・木村舞子さん
木村舞子的、サステイナブルライフへの4か条・不要な包装を断る
・プラスチック製品を極力避ける(プラスチック製品の中には健康に害があるものも!)
・より環境や身体に優しいものを選ぶ (切り替える)
・菜食を心がける
Vol. 13 なぜオーガニックなのか
ここ数年で食べるもの、着るものや化粧品などオーガニックという言葉や認証マークを目にする機会が増えたと思います。特に環境問題についての取り組みとして、使用するコットンをオーガニックに変えるというブランドも増えてきていますよね。
でもなぜオーガニックの方がいいのか。具体的にはわからないけどなんとなく、そうでないものよりはオーガニックの方が良い(高品質だ)とぼんやり認識している人も多いのではないでしょうか?最近では食品や製品として質が良いというだけではなく、気候危機の大きな解決策の一つとして“リジェネラティブ・オーガニック(環境再生型有機農業)”というものが注目されています。
今回はそのリジェネラティブ・オーガニックについていち早く注目し、その取り組みを広げようと活動しているパタゴニアに取材をさせていただいたので、そこで学んだ内容を皆さんにシェアしたいと思います!
皆さんはアウトドアのウエアやグッズで有名なパタゴニアに「プロビジョンズ」という食品部門があるのをご存じでしょうか?プロビジョンズにはアウトドアに特化したフリーズドライの食品や缶詰、ビールなど様々なプロダクトがあるのですが、そのどれもがオーガニックの作物や持続可能な漁法で捕られたシーフードなどから作られています。
私が最初にリジェネラティブ・オーガニック(以下RO)という言葉を耳にしたのが『KISS THE GROUND』というドキュメンタリー映画なのですが、そこで語られていたROのことを知って「これが環境問題への解決策じゃないか!」と感動していた頃とほぼ時を同じくして、パタゴニアのインスタグラムにもROについてのビデオがアップされました。
オーガニック(有機農法)は合成化学物質、遺伝子組み換え技術、抗生物質や成長ホルモンを使用しない農法ですが、ROはオーガニックをさらに前進させ、土壌を“回復”させることを優先した農法です。
従来の農法で生産される作物は、広大な土地を耕し、1種類のみを広範囲にわたって植え、農薬や除草剤を使い、化学肥料を施すものがほとんどです。
私たちが口にする食べ物は95%土壌に由来しているそうですが、従来の農法では土壌を劣化させてしまっているものの、作物は化学肥料からの養分で成長するため、作物本来の生命力がなく、結果、栄養価が低いものになってしまうそう。また、耕すことによって土壌が酷使されるため、農地での砂漠化などが進行してしまいます。従来の農業を続けていくと私たちのほぼ全ての食料を生み出している世界中の表土が60年以内に消失すると言われています。
ROはその逆で、土を耕さず、複数の作物を植え、農薬や除草剤、化学肥料は使いません。私も最初に聞いた時は驚きました。「え?土って耕すものじゃないの?」と。実は長年にわたって行ってきた土を耕すという行為が土を劣化させる大きな要因なんだそう。
植物は光合成で二酸化炭素(CO2)を吸収し、酸素(O2)を空気中に戻すのと同時に炭素(C)を土の中に固定する役割を担っています。昨今地球温暖化で問題になっている二酸化炭素ですが、その“炭素”を戻すべき場所は土の中なんです。土の中には本来豊かな土壌生物の生態系があります。植物が吸収した空気中の二酸化炭素は根を通じて土の中に放出され、微生物に取り込まれることで土の中に留められます。さらに微生物はその炭素によって様々な栄養素を作り、植物(作物)にも栄養を与えてくれます。土を耕すとその土壌生態系が壊され、土のなかに空気が供給されることで微生物による分解を必要以上に人為的に活発にしてしまうため、地中にある炭素が空気中に流れ出てしまうのです。
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ROでは土はなるべく耕しません。土の表面にはカバークロップと呼ばれる、表土を覆う作物を植えて常に植物がある状態を作り、さらに様々な作物を同時に植えておくことによって自然環境に近い状態にします。そうすることで炭素の吸収率がぐんと上がると共に、土壌生物による生態系が保たれるため、土壌は健全に豊かな状態に戻っていきます。
土を耕してしまうと、表土と呼ばれる表面から15cm程度の土を直に雨風にさらすことになります。その結果、大雨などの影響で表面の土が流され、泥になり、最終的には貴重で限りある土壌が失われて作物生産できない土地になってしまいます。さらにはその土が湖や海に流れ着くことで、珊瑚礁が覆われ、死んだりもします。
ROのように植物が常に表面にある状態を作ると、様々な植物の根が絡み合って固定され、植物の根っこやミミズ、微生物などの生き物たちが地中に空気や水の通り道を作ります。その結果水分を蓄えやすい土地になるので雨で簡単に表土が流されることは無く、安定した土壌が形成されます。それが本来の自然な土壌の状態であるということです。
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今、世界的に二酸化炭素の排出量を削減することが必須として様々な取り組みが行われていますが、実は排出を抑えるだけでは不十分な段階にあります。すでに長期間にわたって放出された温室効果ガスが大気中に蓄積されているからです。研究によると全世界の農地でこのRO農法を実践すれば大気中の二酸化炭素を地中に埋め戻すことが可能で、それによって農業が地球温暖化の解決策の一つになります。
土壌の回復は作物の栄養素にも大きく関係します。調査によると、オーガニックの野菜や果物は従来の農作物に比べて窒素含有量が低く、抗酸化物質の含有量が高いことがわかっているそうです。それによってより深い風味が生まれ、長く保存することができるのだそう。
ROが環境問題を解決する可能性を持っていることはわかったけれど、どうやってそれを応援したらいいのでしょう?残念ながらROで生産されている作物はまだ非常に限られています。しかしながら私たちが意識的にオーガニックの製品を選ぶことによって生産者をサポートすることができ、今後ROの生産者を増やしていく力になっていくと思います。
パタゴニアは複数の企業と協力して2017年にリジェネラティブ・オーガニック認証の確立を支援しました。今後こういった認証を取得する生産者が増えれば、消費者も何を買えばいいか選択しやすくなりますよね。
今、世界的に二酸化炭素の排出量を削減することが必須として様々な取り組みが行われていますが、実は排出を抑えるだけでは不十分な段階にあります。すでに長期間にわたって放出された温室効果ガスが大気中に蓄積されているからです。研究によると全世界の農地でこのRO農法を実践すれば大気中の二酸化炭素を地中に埋め戻すことが可能で、それによって農業が地球温暖化の解決策の一つになります。
土壌の回復は作物の栄養素にも大きく関係します。調査によると、オーガニックの野菜や果物は従来の農作物に比べて窒素含有量が低く、抗酸化物質の含有量が高いことがわかっているそうです。それによってより深い風味が生まれ、長く保存することができるのだそう。
ROが環境問題を解決する可能性を持っていることはわかったけれど、どうやってそれを応援したらいいのでしょう?残念ながらROで生産されている作物はまだ非常に限られています。しかしながら私たちが意識的にオーガニックの製品を選ぶことによって生産者をサポートすることができ、今後ROの生産者を増やしていく力になっていくと思います。
パタゴニアは複数の企業と協力して2017年にリジェネラティブ・オーガニック認証の確立を支援しました。今後こういった認証を取得する生産者が増えれば、消費者も何を買えばいいか選択しやすくなりますよね。
オーガニックがいいということはわかっていても高いからと躊躇する方も多いと思います。私も以前はそう思ってました。でも本当にオーガニックは高いでしょうか?
確かにスーパーで見かける“普通”の野菜たちに比べれば“オーガニック”のものは高く感じるかもしれません。でも本来ならばオーガニックがスタンダードであるべきだと思います。それ以外のものが安すぎるんです。土壌や動物、労働者の健全性を大切にする方法で育てられた栄養のつまった作物に、正当な対価を支払うのは当然のことではないでしょうか?
実はパタゴニアでは10年ほど前から“サステナブル(持続可能な)”という言葉を使うのをやめたそうです。それは物を作り続ける以上、持続可能であるというのは不可能だから。そして今、現状を“持続”させるだけでは不十分な段階に来ており、回復させることが不可欠です。
パタゴニアの創始者イヴォン・シュイナードの言葉で「新しいジャケットは5年か10年に一度しか買わない人も、一日三度の食事をする。我々が本気で地球を守りたいなら、それを始めるのは食べ物だ。」というのがあるそうですが、まさに日々の食事で何を選ぶかは誰にでもできる大きなアクションの一つです。パタゴニアでは食品のビジネスを通して、今私たちが何をすべきかということを訴えています。
ROは環境問題を解決する大きな可能性を持っていますが、特に日本ではまだまだ一般に認知すらされていない状況です。まずは多くの人が知り、需要を高めることが重要だと思います。映画『KISS THE GROUND』(Netflix)やパタゴニアのサイトでは映像でROをわかりやすく説明しているので、そちらもぜひチェックしてみてください!
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木村 舞子
百々千晴氏に師事し、独立後は雑誌や女優のスタイリングを手がける。ベーシックアイテムを主軸としたスマートなスタイリングが得意。
Instagram: @maiko.mu