フォルムの美しさと素材の個性。注目される作家の椅子を集めたら、二つの共通点が浮かび上がってきた。ならばと試みたのは、同じ魅力をもつファッションとの競演。いま話題を集める椅子と服との邂逅から、時代が求めるデザインが見えてくる。#気鋭な椅子と
気鋭な椅子と春のファッション。デザイナー村尾守の積み木遊びのように作るハイスツール

奈良県・十津川村の木工作家/デザイナー、村尾守が作るハイスツール。どっしりした無垢材が醸し出す存在感と、パズルのような造形との組み合わせがユーモラス。上質なラムレザーを使ったジレやスカートも、有機的なシルエットと光沢が強い印象を残す。〈OS10〉*受注品 H62.5×W37.5×D37.5cm ¥342,000(MURAO)/ジレ ¥542,300、スカート ¥762,300、サンダル ¥113,300(以上トッズ | トッズ・ジャパン)
デザイナー、木工作家・村尾 守のクリエイションの源とは
フレッシュな椅子を生み出している作り手は、何から刺激を受け、どんなクリエイションを目指しているのだろう。その発想の源や大切にしていることを聞いてみた。

時代も場所も関係なく惹かれる形を
「4分の1の円に正方形を足した形が面白いなと思い、その図形をパズルのように組み合わせたスケッチを、何枚も何枚も描きました」
豊かな自然に囲まれた工房で、デザイナー/木工作家の村尾守さんがそう語る。ハイスツール〈OS10〉は、いわばそのスケッチに分厚い奥行きを持たせた立体だ。個々のパーツはクスノキの無垢材。それらを木製ダボでつなぎ合わせ、積み木遊びのようにユニークな造形を作り上げている。ガツンと力強いカタマリ感もさることながら、丁寧に磨かれた木の滑らかさにはうっとり。ずっと触っていたくなるほどだ。サイドテーブル代わりにもなるし、横に倒して使っても楽しい。
「図形は小学生のころから好きでした」と話す村尾さんは、大学でプロダクトデザインを学び、就職・結婚後はDIYの延長のように家具や生活道具を作っていた。ところがそのうち、「作りたいものや頭に浮かんだアイデアを、思った通りの形にするには、正確な技能と技術が必要だ」と思い立つ。ほどなくして通い始めたのは奈良の職業訓練校。その後、十津川村へ移住し、インテリアブランド〈MURAO〉を立ち上げた。ちなみにスツールのシリーズ名は〈OOPSTOOL〉。由来は時代も場所も超える存在「オーパーツ」だ。

「日常生活の中でも、身の周りのあらゆるものから“気持ちいい形”をキャッチし、自分の中にストックしているんです。そういった形を、木工の仕事を通してアウトプットしているのだと思います。もの作りを続けていると、どうしても奇をてらった造形に惹かれてしまうことがある。そういう時はいつも、本当に自分の好きなフォルムなのかな、と心の中のストックに重ねてみるんです」
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村尾 守
むらお・まもる>> 1986年神奈川県生まれ。2020年にインテリアブランド〈MURAO〉創業。奈良県の十津川村にある工房で、ハンドメイドによる木工家具や器を制作する。
Photo_Masaya Tanaka (TRON) Styling_Tomoko Iijima Hair&Make-up_Shinya Kawamura (mod’s hair) Model_FLORENCE Text_Masae Wako Special Thanks_Yusuke Takeuchi